ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

外国小説 小説 文庫本

【終わったはずの恋】191.『情事の終り』著:グレアム・グリーン

投稿日:8月 25, 2019 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、グレアム・グリーンの『情事の終り』です。

情事の終り (新潮文庫)

 

■あらすじ

作家のベンドリックスは、人妻のサラと恋に落ちますが、ある日突然ベンドリックスの元から姿を消しました。

それから1年半後、ベンドリックスはサラの夫ヘンリーと出会います。彼は、妻サラが不倫をしているのではないか、と心配しています。

ベンドリックスは、ヘンリーをうまく説得し、サラを探偵に監視させます。

 

■作品を読んで

表紙のジャケットのせいもあるのですが、すごくミステリー要素の多い作品なのか、とものすごく気になっていました。

というか、あらすじをパッと読むとサラの夫のヘンリーってかなり間抜けなおっさんだな、と思ってしまいます。

妻の不倫相手に騙されて探偵をつけるとか、ある意味すごい。

それにサラと不倫をしていたベンドリックスもすごい執念。忽然と姿を消してしまったものはしゃーないでしょ、まだ執着するか、と突っこみたくなります。

ただ、この作品の本当のテーマはここにはありません。ただの前置きです。

読み進めていくとベンドリックスとサラとの出会い、サラが消えた日のことなどが書かれています。

すごくワクワクしながら読み進められます。どうなっていくのか本当に気になります。

物語の中盤で探偵はベンドリックスにあるものを渡して、探偵の任務を終えます。

あるものとは、サラの日記でした。探偵はサラの家で行われたパーティでうまいことサラの部屋に忍び込んで持ち出すことに成功していたのでした。

サラの日記には、夫ヘンリーと過ごす日常やベンドリックスとの逢瀬など、個人的なことが書かれていました。

そりゃ、ベンドリックスもヘンリーのことが書かれていたら嫉妬の1つや2つはありますわな。

それよりも驚いたことに、なんとサラはかなり自分の信仰の問題に苦しんでいました。

この信仰の問題というのがもう1つのテーマです。

サラはカトリック教徒でした。イギリスはイギリス国教会、つまりプロテスタント系の国です。世界史を習っている方であればおなじみです。

サラは夫がいながらベンドリックスを愛する自分に苦しんでいました。

しかも、カトリックなので、離婚することが容易ではないです。夫と離婚はできない、けどベンドリックスを愛している。

この矛盾した悩みを解決させるべくサラは教会に通っていました。

ですが、それでもサラはベンドリックスを愛していることに気が付き、再びサラとベンドリックスは再会します。

再会したと思ったら、何とサラは咳がひどい状態からそのまま帰らぬ人となってしまいました。

そして、ここからまた変な展開になるのだが、サラの夫ヘンリーはベンドリックスと一緒に暮らすことを提案し、そのまま実現します。

まるでサラが死んだことによって変な意味で仲間を得たかのよう。

ですが、サラが亡くなったという事実は、各個人がそれぞれ違った意味を持ち、受け入れるための苦しみはたとえ一緒に暮らしていても共有しきれないのです。

なんか、そんな気がしました。それにしても中年のおっさん2人が愛してた女をなくしたからって一緒に住むのかい、と突っこみたくなりますがね。

 

■最後に

はじめはミステリーのように展開していくのかと思いきや、日記が登場し、思わぬ展開を迎えて終わっていきます。

あらすじを読む限り、「なんだこの設定は」と突っこみたくなるし、一緒に暮らすというのもなんじゃそらなのですが。

でも、愛と信仰というかなり重いテーマを扱っています。こうすれば敷居が低くなるかしら。

 

 

-外国小説, 小説, 文庫本,

執筆者:


comment

関連記事

【社会の現実】120.『男も女もフェミニストでなきゃ』著:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

こんばんわ、トーコです。 今日は、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの『男も女もフェミニストでなきゃ』です。 男も女もみんなフェミニストでなき   ■あらすじ この本は、著者がTEDのプレゼ …

【ファッションって何だ】266.『服を作る』著:山本耀司

こんばんわ、トーコです。 今日は、山本耀司の『服を作る』です。 服を作る 増補新版-モードを超えて (単行本)   ■あらすじ デザイナーであるヨウジヤマモトのこれまでの軌跡をインタビュー形 …

【知られざる姿】471.『一茶』著:藤沢周平

こんばんは、トーコです。 今日は、藤沢周平の『一茶』です。   ■あらすじ 小林一茶は、生涯で約2万の俳句を残しています。 しかし、生前はほとんどの時期を貧しい中で過ごし、晩年はかなり荒業で …

【少女の運命は?】452.『結婚式のメンバー』著:カーソン・マッカラーズ

こんばんわ、トーコです。 今日は、カーソン・マッカラーズの『結婚式のメンバー』です。 ・ ■あらすじ 12歳のフランキーは、兄の結婚式に行けば人生が変わると信じていました。 南部の町に住む少女が、いつ …

【泣ける話】485.『ぎょらん』著:町田そのこ

こんばんわ、トーコです。 今日は、町田そのこの『ぎょらん』です。 ぎょらん posted with ヨメレバ 町田 そのこ 新潮社 2023年06月26日 Amazon Kindle 図書館   ■あ …