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お仕事小説

【添乗員の仕事】360.『たまごの旅人』著:近藤史恵

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こんばんわ、トーコです。

今日は、近藤史恵の『たまごの旅人』です。

 

■あらすじ

あこがれだった添乗員になり、様々な国を旅する。アイスランド、スロヴェニア、中国…。

しかし、2020年になると状況が一変する。

 

■作品を読んで

まずは、これまで紹介している近藤史恵作品を。190.『スーツケースの半分は』

偶然なのか、それともトーコの興味範囲が丸出しなのかわかりませんが、こちらも旅を主題にした作品なので、良かったらどうぞ。

近藤史恵さんって本当は旅の本ばかりの人ではないので、そろそろ他のテーマを題材にした作品を読んだ方がいい気がしてきます。

さて、本題に行きましょう。

この物語の主人公の遥は、大学卒業後、旅行会社に就職し、添乗員として働くという夢をかなえます。

1番最初の旅先はアイスランドで、初めて先輩添乗員なしの1人で団体旅行を仕切ることになります。

ここで、一応添乗員という仕事について簡単に触れます。まずご存知の方も多いでしょうが、添乗員のほとんどが派遣社員です。

アイスランドに向かう飛行機の中で遥は憧れの添乗員の宮城に再会します。彼女からもこういわれます。

旅が好きだからこの仕事を選ぶ人は多いけど、そういうのってこの仕事の一面でしかないんですよね。わかります?まだわからないですよね

「あなたに憧れてこの仕事に就きました」と遥は宮城に伝えた後に言った言葉です。

遥はこの言葉の意味が全く分からず、戸惑います。就職したばかりの人間には、好きだけで選んだ仕事の裏面なんて見えるはずもありません。

しかし読み進めると、遥も読み手の読者も添乗員という仕事の色々な面が分かってきます。

最初のアイスランドの章では、空港で休むところが少なく、やっと見つけたカフェでカフェオレの値段を見たら5ユーロします。

高齢の夫婦から飛行機は狭いし、空港で座ることもできない、と不満を言われます。高いお金を払っているのに、と思うからなおさら。

それは添乗員さんのせいではないよね、と大多数の読者の皆さんには思ってほしいのですが、日本はこういう言い方をする人が多い気がします。

なんかみんな血が通った人間が仕事しているのだから、もう少し態度とか考えたいな、と思いました。

嫌ですよ、旅に来てそんなシーン見るの。物価が高いって分かっているのになんで選んだんだ、と言いたいですもの。

それから、ツアー参加者の体調管理。天候の変化や食べ物であてたりとかはありますし、トーコもメキシコで食あたりにあたりましたが。

幸いにも日本語が通じる人が朝食のカフェにいたので、その方に通訳していただき、病院で症状をなんとか伝えることができましたが。

やはりですが、アイスランドツアーに来た高齢夫婦の奥さんがずぶぬれになって体調を崩します。なんせ雨具を持ってきていないのですから。

雨が降っている+滝の水しぶきで濡れる。トーコも滝には行ったことがないですが、外国の有名な滝は日本の滝とはスケールが違うので、雨具装備ナシは相当危険な気がしています。

というのは多少旅慣れている人間だから考えつくのでしょうか。普通の人は想像できないかもしれませんね。

ツアーから分かれ、遥と高齢夫婦は路線バスでホテルに戻ります。しかし、高齢夫婦の奥さんは食欲がなく、おにぎりが食べたいといいます。

どうすればいいのかと遥は考え、スーパーに行き日本米に近いコメを調達し、キッチンを借りてごはんを炊こうとするも失敗します。

途方に暮れていた時に、飛行機で会った宮城に連絡を取ります。彼女はキッチンクッカーを持ってきており、それでごはんを炊き直します。

今度は成功し、無事におにぎりを作ることができました。おにぎりを夫婦の部屋に届け、感謝されます。この光景を見て、遥はこう思います。

わたしは思う。誰かに喜んでもらうって、素敵なことだ、と。

初めての添乗で緊張しており、いい人ばかりでないツアー参加者を案内するという仕事は、旅をするという夢だけでは現実に打ちひしがれてしまうこともあるかもしれません。

なにか自分の中で、小さくてもいいから達成感ややりがいみたいなものを見つけないとつらいこともあることでしょう。

遥にとっては誰かに喜んでもらうことが1番達成感があり、やりがいのあることだったのだと思います。

それから、スロヴェニア、パリ、北京と旅をしていきます。

スロヴェニアでは、定年退職し、退職金も年金も安定的にもらえるいわゆる勝ち組な父親と、非正規雇用となじられる娘という親子が出てきます。でも、娘さんは結構変わります。

パリでは結婚相手を紹介する息子と母を描いています。

北京ではスーツケースが出てこないというトラブルがあり、そういえばトーコは直接遭遇していないけど、空港からの迎えのバスが一緒の人でスーツケースが出てこなくて、化粧品をあげた記憶を思い出します。

同乗の人も、成田で出てこなくてそのまま届けてもらったよ、とある意味ラッキーな話を聞いたり。トーコの懐かしい記憶も思い出します。

最後の章は、沖縄からです。2020年に新型コロナウイルスがやってくると、次第に遥の仕事がすべてなくなり、一人暮らしが立ち行かなくなったので、家を引き払います。

最初から添乗員になるのに反対だった両親と距離を置きたくて、沖縄でコールセンターの期間限定のバイトに就くことになりました。

遥は父親が苦手なので、ツアーの中で登場する父親と同世代かそれ以上の年齢の男性に対しての見方が若干辛辣な気はしますが。

同時期、遥の親友の千雪は看護師として働いていたので大変な状況だったので、沖縄にいることはなかなか言えずにいました。

その時に散歩中に、近所のコテージで美鈴に出会います。彼女は東京から戻ってきました。しかも余っているという石垣牛でバーベキューもします。しかし、次の日にはコテージは売りに出されており、美鈴は消えてしまいました。

この出来事を誰かに話したくなり、久しぶりに千雪と話すことにします。

リモート飲み会をし、お互いの近況を話し、遥が千雪を避け続けていたこわばりが少しずつ取れていきます。

千雪はいつかまた旅行に行きたいし、そのために仕事頑張る、といいます。

旅にはそういう力がありますし、なんかわかります。遥もきっとそれを知っているから、まだ添乗員でいたいと思うのでしょうね。

ひょんなことから美鈴と再会し、遥は1つ提案をします。それは、千雪やその同僚にリモートで沖縄の風景を届けるというものでした。

遥は沖縄本島で、美鈴は竹富島で中継を行います。希望者がいればオプションで名物もプレゼントするという企画です。

コロナ渦で旅は出来ないけど、オンラインならどんな遠くでもつながることはできるし、逆もできる。

パンデミックが起こって旅行業界全体でどうなるんだろう、と思っているさなかの明るい希望を見つけて物語は閉じます。

 

■最後に

旅はいいことばかりとは言い切れず、明るいことばかりではないです。また、添乗員の仕事の大変さも垣間見ることができます。

けれど、どこかでまた旅に出たいなと思わせてくれる作品でもあります。最後は旅に対して希望が持てますよ。

 

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