こんにちは、トーコです。
今日は、藤沢周平の「花のあと」です。
■作品紹介
この作品は8作の短編小説が収録されています。
物語の舞台は武士の時代の世の中。武士を描いていたり、町人を描いていたり、はてまた広重を描いた作品もあります。
■作品を読んで
どの短編もすごく味があります。全部は紹介しきれないので2つだけ紹介します。
「冬の日」という話からです。
清次郎はやっと店を持ったばかり。ある日たまたま入った料理屋でおいしという女性を久しぶりに見ます。おいしは清次郎の近所の但馬屋という大きなお店の娘で、清次郎には小遣い、母は内職をもらって生活していました。
さらにおいしは暴力をふるう男と一緒に暮らしていました。おいしの落ちぶれた姿をみて清次郎は助けるのでした。
最後に清次郎の店に現れたおいしにこういいます。
「もしいやでなかったら、このまま店を手伝ってくれると助かるんだがな。
出来ればずっと、いっちゃんさえよかったら、一生手伝ってもらいたいんだよ」
と告白します。なんだか、日本人だな、と思ってしまいます。この言い方はさりげないですね。すごくほっとする場面です。
「疑惑」という作品におるいという女性が登場します。
おるいはとても美しい女性で、河内屋の旦那庄兵衛に嫁ぐも、夫は病弱で子供もなく、鉄之助を養子として引き取るも立派な悪党になってしまい、よく金をせびりに行きます。
そんなとき河内屋で庄兵衛が殺され、おるいは縛り上げられるという事件が発生します。犯人は鉄之助だろうと捜査を進めていました。
しかし物語のラストで真犯人がわかります。誰かといえばおるいと祈祷師の三斎でした。この2人、もうずっと恋仲なのですから。この時代不義密通は重罪です。旦那を殺して鉄之助に罪をかぶせようとしていたのですから。
ただすごいのは、いくつもの罪を犯しているのにおるいの女の色気というものが妙に伝わってくることです。もちろん、この人の行ったことは罪です。だけど不思議と悪いとは思わないのです。
うん、不思議だ。
■最後に
上段で紹介した話のほかにも様々な短編が収録されています。
すごく人間味のある話が多いです。中には例外もありますが。
読み応えある本です。
以前に紹介した藤沢周平の本を以下に示します。
[…] 6.「海鳴り」、54.「花のあと」 […]
[…] 6.『海鳴り』、54.『花のあと』、176.『漆の実のみのる国』 […]