こんばんわ、トーコです。
今日は、浅田次郎の『天国までの百マイル』です。
■あらすじ
主人公の安男は、事業に失敗し、妻子とも別れ、孤独に生きる中年男。
そんな中、母親が重い心臓病で今の病院では助かる見込みが少ないことを知る。
母親を助けるにはバイパス手術を受けるしかない。安男はそう信じ、天才心臓外科医がいる病院まで走る。
■作品を読んで
久しぶりに超純粋に感動できる作品を読みました。
なんというか、最初の設定の時点でなかなか感動できる要素満載の作品ですね。
お涙頂戴といわんばかりではないんですが。
安男は事業に失敗ののち、友人の会社に引き取られて働いています。
そんなある時、母親が重い心臓病を患ってることを知ります。
なんとか母親を手術を受けさせたい。
安男の兄弟が集まり話し合うも、安男がいるのでろくなことにならないと、兄弟たちからの支援はありませんでした。
安男の家は母親が1人で働いて、4人の子供たちを育てました。
安男が母親を車で名医のいる病院まで送り届ける道中に、母親はこういいました。
不幸な育ち方をした人間が幸福になるっていうのは、とっても難しいことなんだよ。
だからこそ、今掴んでいる幸福を守りたいものなのでしょう。
それにしても、母親1人に対して兄弟4人ならそんなに負担は重くないはずなのですが。
妻子と別れた後、マリという水商売の女とともに住んでいました。
安男の給料はほぼ全額妻子への仕送りで終わってしまうので、マリによって生きていたと言っても過言ではありません。
物語の中盤でなんというか、マリさんものすごく男前なことをします。
マリは別れた安男の妻の英子に、安男を引き取って元の鞘に収まるよう説得します。
好きだからといってそこまでやるか、男の幸せをそこまで願えるのか。すげーな。
それが済んだら、マリは2度と会わないつもりで安男に電話しました。
なかなかの行動力だな、と思いました。
また、ドクター曽我というバイパス手術の名医の存在も破天荒です。
安男と初めて会ったときは釣りしてるし、母親を入院させた後、安男に「歯の治療をしろ」と指導し、癖のある歯医者のもとへ行かせるし。
それでも、ドクターの冠動脈バイパス手術説明のシーンはかなりわかりやすいです。
冠動脈バイパス手術ってこーいう仕組みなんだな、と感心します。
解説を書いたのは、まさかの天野篤医師。この方は、上皇の冠動脈バイパス手術を執刀した方です。
医者の目線からの解説ってある意味すごい。
先ほどのドクターの説明シーンは、医者から見ても大変わかりやすいのだそうです。
ちなみにですが、ドクター曽我のモデルは天野医師の元上司で、病院のモデルも元上司と勤務していた病院だそうです。
それにしても、上皇もこの手術受けたのか…。そら、今年改元しますわな。
■最後に
母親を助けたいという、中年ダメ男の純粋な想いが様々な人を動かしていきます。
たくさんの人が安男を助けてくれますし、安男自身も変化していきます。
様々な魅力ある登場人物が出てきます。すごく味のある作品です。