こんばんわ、トーコです。
今日は、ヘミングウェイの『海流のなかの島々』です。
■あらすじ
トマス・ハドソンは妻子と別れ、1人海の中の孤島に暮らしています。
そんな中、夏休み期間中に3人の子供たちがやってきて、ひと夏を一緒に過ごします。
ビミニ、キューバ、洋上の3部構成で物語は展開します。
■作品を読んで
この作品はヘミングウェイの遺作で、ヘミングウェイの死後家族の手によって出版された作品です。
また、あらすじにも作品の構成としては、ビミニ、キューバ、洋上の3部と書きましたが、実はこれ4部構成だったそうです。
で、4部に当たるのは一体何なのかというと、「老人と海」です。
ヘミングウェイのスーパー代表作で、トーコも好きな作品の1つですが、もともとこれは本作品の一部。
「老人と海」が独立して出版され、名声を得るにつれ、ヘミングウェイは本作「海流のなかの島々」を発表しにくくなってしまったというのが一説です。
だからヘミングウェイの死後に出版したというわけ。
そんなゴシップがこの作品にはあったりします。
さてこの作品ですが、なんというか、ヘミングウェイにしては珍しい描写があります。
それは、家族を慈しむ描写です。最初の第一章のビミニで、別れた妻との間にできた3人の息子とひと夏を過ごします。
強い男を描くのがヘミングウェイというイメージからはずれますが、息子たちの成長を慈しむ姿は本当に印象的で、逆に安心します。
あ、この人も普通の父親が描けるんだな、と。
ただ、やはりですが、子供たちが自分から離れたように思い、孤独感を感じたり、すぐに子供たちが帰った後の静かな生活に戻れるよう自分を戒めたりと、妙にマッチョな描写もあったりします。
この章の凄いところは、夏休み期間が終わり息子たちがかえってしばらくした後に、下の息子2人が交通事故で亡くなります。
解説では男に英雄的な意味づけを与えたかったとしていますが、なんというか、ちょっとここが荒い気がします。
トーコ一個人としては、あんまり意味を与えていないなあ、と思っています。
第二章のキューバは、1番印象的な描写は男がネコと戯れる描写でしょうか。
ネコを撫でているのに、女を撫でているそんな冒頭の生々しい描写にぞっとします。
最後になり1番上の息子の母親で女優の女が男の目の前に現れます。
1晩をともにし、最後は女が部屋に取り残されます。
なんか、「夜間飛行」に似ている。ま、女は寂しそうではないが。
第二章の空気感はほかの章と異なり、海を中心と描いていないせいでしょうか、すごく脱力感があり、このほかの章と時間の流れ方も明らかな違いがあります。
第三章の洋上は、船に乗り、なかなかな行動に出ます。なんてたっていきなり銃撃戦
始まって、最後は息絶え絶えになっているのですから。
人の死がかなり近いこと、なんというかあまりにもドラマチックに終わりすぎてて、拍子抜け感はありますが…。
冒頭で、この作品のゴシップ要素を説明しましたが、もう1つ言えば、この作品はかなり自伝的な要素が多い作品でもあります。
例えばですが、最後の男の死の場面は特にヘミングウェイの理想を表しているのではないかといわれています。
というか、この作品自体がヘミングウェイの家族などのパーソナルな部分を混ぜ込んでいます。
いろいろ謎の多い作品ですね。
■最後に
最後の遺作にして、非常に自伝的な要素の多いです。
ところどころの描写は読者を唸らせるものも多々あります。
男は強いだけではないようです。