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【生まれ変わる】465.『奔馬』著:三島由紀夫

投稿日:8月 16, 2023 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、三島由紀夫の『奔馬』です。

 

■あらすじ

38歳になった本多繫邦は、大阪の控訴院判事となっており、妻となる女性と結婚し、平穏に暮らしていた。

ある時、そんな彼の前に、20歳の時に亡くなった友松枝清顕の生まれ変わりである、飯沼勲が現れる。

 

■作品を読んで

この作品は、三島由紀夫のライフワーク『豊饒の海』シリーズの第二巻です。

なんというか、血盟団事件という昭和の初めのころに起こったテロ事件をもとにし、最後は切腹自殺までするのですから、三島由紀夫と重なるところがあり、1番三島由紀夫の核心を入れ込んだ作品となっています。

とはいえ、女子目線で言わせれば、結構ここから一気に読むのがしんどくなります。明るい要素がほんとにない。

第一巻はこちらから。464.『春の雪』 なかなか悲劇的な最期から18年後の世界が舞台となっています。

それでは作品に行きましょう。

冒頭の10ページに、38歳になった本多繫邦の裁判官になった近況が描かれています。

もはや青春時代がだいぶ遠ざかり、刺激こそ多くはないけど、中年と呼ばれる年代に差し掛かる前の職業的にも安定し、妻という家族を得、平穏といえば平穏な日常を過ごしていました。

しかし、20歳の時に亡くなった友人の松枝清顕については忘れられずにいました。そして、年を取ったことをこういいます。

ずっと若いときには、現実は一つしかなく、未来はさまざまなな変容を孕んで見えるが、年を取るにつれて、現実は多様になり、しかも過去は無数の変容に歪んでみえる。そして過去の変容はひとつひとつ多様な現実と結びついているように思われるので、夢との境目は一そうおぼろげになってしまう。それほどうつろいやすい現実の記憶とは、もはや夢と次元の異なるものになったからだ。

なんか、この感覚がすごくわかります。30代に突入すると少しずつ若くはないんだなあ、と思わせる出来事が増えてはいます。

けど、人生の選択肢が増えているのか、現実がいろいろと増えているようにも感じているのもまた事実。そして、過去が少しずつ歪んで見えてくる。

まあ、過去って本人しか体験しえないことだから、歪んだとかいちいち騒がなくてもいいんでしょうが。

幸いにも、清顕は本多に夢日記を残していたので、清顕との青春の日々を証明するものは残ってはいるんですが。

そんな日常がいろいろと過ぎていく中で、本多は奈良の神社の剣道の試合を見に行きます。そこで、竹刀を一心不乱に振る飯沼勲という少年と出会います。

驚くなかれ、この飯沼勲の父親は、かつて松枝家の書生だった飯沼茂之でした。清顕のことを「軟弱もの」と心の中で思っていた例のやつです。

本多は飯沼勲を、清顕ほどの美しさはないが、清顕にはない質実剛健差は持ち合わせた少年だと思います。

同時に、勲が清顕の生まれ変わりだと信じます。清顕と同じく、脇腹に3つの黒子があるのを見たからです。(それだけで決めんなよ、っていったらだめか)

ここで初めて、この物語が輪廻転生をテーマにした物語だということを思い出します。って、トーコだけかもしれませんけどね。

一方の勲も、『神風連史話』という愛読書を本多に渡します。本多が読み始めたら、なんと40ページくらいは『神風連史話』に割かれています。

ここでは、勲が影響を受けた教えという面と、三島由紀夫の主義信条は見えてくるような気がします。

最後の2ページで、神風連の連中が最終的に自決する場面があるのですが、なんとなくいろいろなポイントが重なってきます。

この自決の場面の描かれ方の感覚は覚えておいてください。

なんでこんな描写があるのかといえば、この思想をもとに勲は政財界、華族の腐敗を憂い、世直しのための反乱を企てておりました。

しかし、その企みはどこかから漏れてしまい、勲は逮捕されることになります。本多は、勲を助けるために判事から弁護士へ転身し、何とか刑の免除までたどり着きます。

勲は父親が密告したことにはまったく驚きませんでしたが、本当の黒幕は恋人の歌人で鬼頭槇子が父親に密告していたのです。槇子は勲の計画を知っていました。

おお、一体どういう意図よ…これは、と思うかもしれませんが、槇子は1度目の結婚に失敗しており、ある意味男が浮気したくてもできない場所つまり牢屋にぶち込んでおけば心配はないだろうということを勲に説明します。

この説明がかなりぶっ飛んでますけどね。ある意味、男への執着ですよ…。

実は父親の塾は蔵原という男の支援なしでは運営ができず、両親たちも支援をもらえなくなることが見えていたので、勲を密告することにしました。

蔵原という男に対しては、最後の最後に「伊勢神宮で犯した不敬の罰を受けろ」と、確かに神事の時に順番を間違えたらしいのですが、もはや殺す理由はなんだってよかったんだといわんばかりの理由で殺します。

その後の追手から逃れるため、勲は自殺します。その描写がこれです。

正に刀を腹へ突き立てた瞬間、日輪は瞼の裏に赫奕(かくやく)と昇った

この作品は、この文章を書きたくて書いたんじゃないかと思うほどの、なかなかの名文です。

赫奕っていう言葉の意味が分からんので意味を調べました。1番近い意味は、光り輝くさま、だそうです。

まあ、三島由紀夫もこうして自決していこうとしたんだなあと思っていたのでしょうか。真相は闇の中です。

第二巻は、第一巻とはまた違った様相で幕を閉じます。

 

■最後に

『豊饒の海』シリーズの中で、最も三島由紀夫の心情が表現されている巻です。

青春を過ぎた後の、中年に差し掛かる前の旧友の目線と若者の目線からのせめぎあいの巻です。

 

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