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【制度的な矛盾】398.『ジョブ型雇用社会とは何か』著:濱口桂一郎

投稿日:6月 16, 2022 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、濱口桂一郎の『ジョブ型雇用社会とは何か』です。

 

■あらすじ

コロナ渦になってより一層ジョブ型雇用が話題になりました。しかし、著者の目から見てもジョブ型雇用の意味をはき違えているではないか、と新たな疑問が起こります。

ジョブ型雇用とこれまでのメンバーシップ雇用の違いについて解説していきます。

 

■作品を読んで

この作品は、発売直後に買ってすぐ読みました。ただ、ブログ記事が全く追いつかず、今書いてますが…。

まず「はじめに」を読むと、この作品を書いたきっかけが書かれています。

それは、制度について誤解のある書き方をした記事があふれたことを端にしています。正直に言うと、かなりイメージと実際の制度と異なる部分がありますので、著者が修正のためにこの作品を出していただいたのには、感謝です。

とはいえ、最近の新書は4ケタ超えがざらなのがちょっと気になるところではありますが…。まあ、お金出せない方は図書館で借りて読んでください。お金出せる方は買ってください。正直、新書の値段下がらないかね…と思う今日この頃です。

まあ、酒とたばこにお金を使うならまあいいか、と割り切ればいいのでしょうか。酒とたばこが決して悪いわけではないので、そこはお許しを。

さて、中身をみましょう。

まず、ジョブ型=成果主義ではありません。そもそも上の役職にいけばいくほど、仕事ぶりは厳しく評価されます。また、ミドル以下はいちいち評価されなくなります。

ジョブ型の場合は、上の役職者がかなりシビアに評価されますが、一般人は評価すらありません。仕事に人を当て込めているから当然ですね。

ですが、メンバーシップ型は末端のヒラ社員まで評価対象になります。この差は大きいです。

しかも、その評価基準は能力考課、意欲考課です。当たり前ですが、入社時に具体的なジョブのスキルがそもそも明示されていないので、評価なんてあってないようなものです。なので、ジョブ型でいうところのジョブのスキルではないです。

おそらく、この点は皆さん大なり小なり問題だと感じているのではないでしょうか。評価基準なんてあってないような状態の査定をもらって、釈然としない思いで仕事をする。

また、解雇についてもジョブ型の方がしやすいという論調がありますが、実際はそんなことはないです。雇用規制のルールは各国で異なるので、それを踏まえて判断しないといけませんからね。

ちなみに、歴史的に見ればジョブ型の方が古いです。メンバーシップ雇用は戦後普及し、70年代から90年代の日本経済の競争力の源泉としてもてはやされただけにすぎません。

さらに、日本型雇用慣行で1番有利なのは若者です。確かに、大学卒業後すぐ就職できる国はどこを探しても日本くらいです。昔、ヨーロッパを旅行していた時に、現地の人に卒業後すぐに就職することを話したらかなり驚かれましたよ。

それも男性が1番有利に就職できます。当然ですね、そもそも女性は男性の補助業務がメインで同じ会社の人と結婚して、はい安泰という時代が長く続きました。

今は入り口は平等になりましたが、企業の中に入ればまだまだ過酷なものがありますが、それはまた別の機会にしましょう。

とまあ、こんな内容が入り口に書かれています。ここまででもかなりボリュームがありますが。

第1章では、ジョブ型とメンバーシップ型の基礎の基礎を語ります。

基礎の基礎というのは、誤解があまりにも多すぎることを憂慮した著者の意向です。

ジョブ型は、職務を特定して雇用します。なので、その職務がなくなれば解雇するしかありません。契約で縛っていますから。

また、ジョブ型は賃金も契約で定める職務によって賃金が決まっています。人に値札はついていません。あくまで職務に値札が付いています。

で、同一労働同一賃金はこの原則にのっとらないと本来は導入が不可能です。メンバーシップ型で同一労働同一賃金が出てくるのはおかしいのです。

欠員補充も違います。ジョブ型は必要なポストに応じて採用するため、基本的に職場の管理者=ボスが採用権限を持ちます。さらに言えば、欠員募集の採用であるジョブ型だと、そもそも何の仕事するのか分からない新卒採用ということはそもそもありえません。

しかも、日本の場合、内定がすでに雇用契約のはじまりとなっています。確かに、内定承諾書にサインした時点で結構大変なことになるというのは転職の時にも聞かされましたね。ある意味安心量でもありますが。

で、極めつけは人事考課。先ほども言った通りで、ジョブ型は上位の役職者以外は基本評価はありません。一方、メンバーシップ型だと末端のヒラ社員まで評価しなければならないせいか、潜在評価で評価するしかないです。

潜在評価とは何か。それはやる気です。やる気を何で見るかは長時間労働になります。ここで、こんなことが起こります。

「濱口はどうも評価は高くないけど、夜中まで残って一生懸命頑張っているから、やる気だけはあるんだな」という評価をするわけです。

日本は労働時間で評価するけれども、そうではなくて成果を見るべきだ、それがジョブ型だ、という近年の訳の分からない議論のもとになっているのは、実はこれです。ジョブ型とは何か、メンバーシップ型とは何かという基礎の基礎をわきまえていると、いかにおかしな議論をしているかが分かりますが、その基礎情報がすっぽり抜けていると、こういうおかしな議論をやらかしながら何の疑問も持ちません。

という、専門家から見れば全く筋の通らない議論をしていることになります。

さらに、判例がメンバーシップ型に合わせてきたというなんか皮肉めいた話。これは労働法を勉強してきた方なら常識ですが、現実の労働法の世界を見るためには判例集が欠かせません。トーコも学生時代に労働法の授業を受けたことがありますが、判例集が教科書でしたね。

第2章は入り口と出口、第3章で賃金、第4章で労働時間について解説しています。このくだりはちょっとくすっと笑ってしまったので、引用します。

若いうちは厳しく叩いてこそ大きく成長するのだと、自分もそのように会社に育ててもらった上司たちは考えているので、自分も鬼軍曹として鍛えてあげようと思ってやり過ぎていると、相手がポキッと折れてしまうケースが多いわけです。

問題は、なぜ上司や先輩が若手社員を鍛えるものだとみんな思っているのかという点です。それは、相手が何もできない何も分からない素人だから、少々手荒れにでも鍛えてあげないと使い物にならないからです。なぜそんな鍛えないといけないような素人をわざわざ使うのですか?、と、ジョブ型の人であれば聞くでしょう。ちゃんとした資格を持ち、その仕事ができると確認した人を雇えば、そんな無駄なことをしなくてもいいのに、と。そう、ここに、ジョブ型社会とメンバーシップ型社会を隔てる深くて暗い断絶の川が流れているのです。

ジョブ型を本格的に導入する場合は、これまでのあらゆる制度を入れ替えないといけないことがここまででよくわかると思います。

単純な比較だけでは議論することは出来ません。どちらかというと、かなり込み入った議論をしなくてはならないものです。

第5章はメンバーシップの周縁地帯で、女性、障がい者や様々な病気を持つ人、外国人について述べています。

第6章は社員組合のパラドックスです。そもそも会社内で労働組合があるというのが、まさにメンバーシップ型雇用。

基本、産業別の労働組合ですし、企業内と言っても正社員だけが対象で契約や派遣、アルバイトは対象外という非常に変な構造になっています。

トーコの会社はなぜか労働組合に入っていないクラスの給与上昇を勝ち取りましたと、労働組合側から提示されてポカーンとしました。

この人たちの交渉をなんで労働組合がしてるんだ…、とすごく謎な気分になりましたが。

最後は実定法上の問題についても取り上げられています。労使協定の結び方も若干問題になりそうですが、そのあたりはぜひ作品を読んでみてください。

ふー、長かった。

 

■最後に

知っているようで知らないジョブ型雇用について、かなりわかりやすく、誤解のないような表現で書かれています。

いかにジョブ型をきちんと理解できていないし、メディアの報道もずれていることがあるんだな、ということがわかります。

 

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