ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

外国小説 小説

【映像のような作品】169.『とるにたらないちいさないきちがい』著:アントニオ・タブッキ

投稿日:5月 23, 2019 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、アントニオ・タブッキの『とるにたらないちいさないきちがい』です。

とるにたらないちいさないきちがい

 

■あらすじ

アントニオ・タブッキはイタリア出身の作家です。また、同時にポルトガルをこよなく愛してもいたそうです。

この作品は、表題作を含めた11編の短編が収められています。

 

■作品を読んで

1番最初の作品を読んだときに思ったのは、作品の世界観には引き込まれました。

だが、登場人物の関係性を理解するのが何とも難解です。

最初の作品は法廷の場面から始まります。判事のフェデリーコと被告人レオ、傍聴席にいるトニーノは同じ学び舎で学んだ旧友でした。

法廷で再開するとは何たることやら…。

この3人はある共通点がありました。同じマッダレーナという女を好きだったのです。

傍聴席のトニーノは誰もがマッダレーナを好きだったころに感傷に浸っていました。

登場人物みんながマッダレーナのことが好きでした。

しかし、誰もトニーノの想いに気が付くことなく、法廷では淡々とフェデリーコは判事として、被告人のレオは淡々と答弁に答えていました。まるで、それぞれがそれぞれの役をこなすかのように。

トニーノの目からは過去と現在がものすごく混在しています。ひょっとすると、トニーノにとってはこの状況がにわかに信じられない部分もあるのかもしれません。

でも、読み手である私たちは、トニーノの語りで物語が進む以上、トニーノを頼って読むしかありません。

トニーノの見ている世界はまるで何かの映像作品のようです。過去の目撃者として、現在の法廷の様子の証言者として。

かつての仲間が、歳月を経て再会しました。ただ、皮肉なことは、判事と被告人として。

歳月という名の「とるにたらないちいさないきちがい」がこうして月日を経て判事、被告人として再会をもたらしたのでしょう。

ただ一つ違うことといえば、区切れも尺度もなしに世界を読みといていくことができなくなっていることでしょうか。

子どものように無邪気にすべてを純粋に見ることなんてできなくなってしまったのですね。

なんという皮肉な結末。

 

1篇しか取り上げませんでしたが、この短編集全体が映像作品のようです。

当事者が当事者っぽくなく、第3者という視点から映像のコマのように描写されています。

おかげで、若干ですが登場人物の関係性がうまくつかみきれません。

ただ、私たちは作品の世界を静かにのぞき込むことができるのです。

 

■最後に

ひらがなで書かれた「とるにたらないちいさないきちがい」が意外と読みにくいです。

でも、作品自体は、過去、現在が様々な登場人物の視点から織り交ぜられています。

すごく映像作品を見ているかの感覚に陥れることができる不思議な作品です。

 

-外国小説, 小説,

執筆者:


  1. […] このブログでも紹介しています。確か、これ。169.「とるにたらないちいさないきちがい」 […]

comment

関連記事

【就活生のその後】179.『何様』著:朝井リョウ

こんばんわ、トーコです。 今日は、朝井リョウの『何様』です。 何様 (新潮文庫)   ■あらすじ 「何者」で出てきたあの登場人物は、今どうしているのだろう。 あの登場人物の過去は、出会いは、 …

no image

【日本のシンデレラ】63.『おちくぼ姫』著:田辺聖子

こんばんわ、トーコです。 今日は、田辺聖子の『おちくぼ姫』です。   おちくぼ姫 (角川文庫)   ■あらすじ 昔々、美しいお姫様が継母にいじめられて召使のようにこき使われていました。 お姫 …

【旅に出たくなる本】21.『旅屋おかえり』著:原田マハ

こんにちは、トーコです。 今日は、原田マハの「旅屋おかえり」です。 旅屋おかえり (集英社文庫)   ■あらすじ 売れないタレントのおかえりこと丘えりかは諸事情によりテレビ番組を打ち切られる …

【圧巻の登場人物】254.『去年の雪』著:江國香織

こんばんわ、トーコです。 今日は、江國香織の『去年の雪』です。 去年の雪   ■あらすじ まず、驚きます。登場人物の多さに。一体何人出てきたんだろう…? しかも、老若男女問わず、さらには時空 …

【娘から見た姿】438.『高峰秀子の捨てられない荷物』著:斎藤明美

こんばんわ、トーコです。 今日は、斎藤明美の『高峰秀子の捨てられない荷物』です。   ■あらすじ 高峰秀子のことを「かあちゃん」と呼び、慕っているうちに松山善三、高峰秀子の養女になった著者か …