こんばんは、トーコです。
今日は、山田詠美の『放課後の音符(キイノート)』です。
■あらすじ
高校生の頃、よく放課後で他愛のない話をしていた時期があったことでしょう。
特に盛り上がっていたのは恋愛の話ではないでしょうか。
誰誰が付き合っている、あの子は誰それ君に片思い。
そんな女の子たちを描いた短編小説です。
■作品を読んで
きっと読めばわかると思いますが、誰もがこの小説に出てくるような甘酸っぱい思い出があるかと思います。時には思い出すにはちくりと刺すような痛みが伴う思い出もあるかと思います。
でも、多くの人たちはそれを通過し、思い出として記憶の中にいるはずです。あった、こんな時もなんて思い出させることでしょう。
その思い出たちを再現しているような小説です。
最初の何作品は、地味で目立たないけど性に対して大人びた子が、グループにいる女の子かつちょっとこの子の魅力のわかる主人公に自分の話をします。
読んでいると、なんというか傍観者のように話を聞く主人公に自分がなっているような感覚になります。
おかげで、実際に物語の世界に入り込めてしまうので、若干リアルさがあります。
ま、それが読書の醍醐味でもありますが。
また、男の子に振られた女の子が、男の子が付き合うことになった女性を見ます。
実際に見た女の子の感想は「28歳っておばさんじゃん」といいながらも、本当に恋をするという意味を考えます。
恋をしたい人は大人ぶる。でも、恋をしている人はお互いを子供に戻す。気怠いというのは大人に憧れるときに言う言葉。
なるほどね。気怠さのある小説ってたまに読みますけど、憧れがベースに横たわっているのでしょうね。
その女の子は最後にシャネルの赤い口紅をもらいます。いつか赤い口紅が似合うようになるため、振られて男の子にありがとうと言って去っていきます。
なんか、潔くていいですね。こんな小道具の似合うのもこの時期の特徴。
大人でもないですが、小道具が小道具じゃないんですもの、この年代。
他にも、ひと夏で男の子に恋して、また自分の住む町に戻ってきた女の子の話や、幼なじみと無事にゴールインした子たちの話など、すごく高校時代を鮮やかに、時には酸っぱくする出来事がたくさん詰まっています。
最後に著者があとがきでこうつづっています。
若いということは、はっきり言って無駄なことの連続です。けれど、その無駄使いをしないと良い大人にはならないです。…というわけで、なあんにも考えずに、恋や友情にうつつを抜かして欲しいものだと、私は思います。
確かに、その通りで。何というか、旅行したり、たくさんの人と話したり、遊んだりという経験は決して無駄ではないのです。
ただ、トーコには恋にそんなに時間を使っていないのですがね。
何となく、良い大人って、話していて厚みがありますね。ネタがある。
良い大人になれずにもがいていますが、まあなるようになるでしょう。
高校生がある人、あるいは現在進行形で高校生のあなたにおススメです。
■最後に
恋も友情も過ぎ去ってみれば甘く、時には酸っぱく、思い出すにも痛みを伴う時があります。
そんな青春の一コマもあったかと思います。
この時間はもう2度とやってきませんが、過ぎ去った時を思い出すのも面白いですよ。