ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

古典 小説 文庫本 時代小説 歴史

【贋作というより創作】172.『伏』著:桜庭一樹

投稿日:6月 9, 2019 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、桜庭一樹の『伏 贋作・里見八犬伝』です。

伏 贋作・里見八犬伝 (文春文庫)

 

■あらすじ

浜路は猟師の女の子で、江戸にいる兄とともに、伏という犬の血が流れるものを狩ることを生業としている。

伏による凶悪事件が発生しているので、幕府は懸賞金をかけて追いかけていた。

 

■作品を読んで

いい意味でも、悪い意味でも「贋作」です。

なぜかというと、この作品のモチーフになっている「里見八犬伝」という話のエッセンスをかいつまんで、著者流にアレンジしています。

なんというか、本当の「里見八犬伝」を読んだことがあり、おぼろげながら記憶があるので、本家の「里見八犬伝」とはまた違うぞ、とは突っこんでおきたいです。

本家は、伏の伝説が違う形で扱われているので。

登場人物たちもそんなに悪者でもないですし、むしろけっこうヒーロー寄りだった気がします。

物語では、本家「里見八犬伝」の作者滝沢馬琴の息子冥土の書く「里見八犬伝」贋作が登場します。

それを聞き終えた後の浜路の感想は、

いつまでもぐるぐる回る、紫色した、でっかい独楽とちっちゃい独楽が、あっちこっちにひとつずつあるみたいだなぁ

本家と贋作には近いようで遠い、交わるようで交わらない何かがあります。

なんだか、独楽の距離感と同じくらい本家と贋作の距離感を感じさせます。

 

この作品は、浜路と兄の道節が伏狩りで生きていくストーリーと、「里見八犬伝」でおなじみの伏姫伝説をまとめる男の語りの2重構造になっています。

伏姫の描かれ方も本家の「里見八犬伝」とは違うものになっています。というか、伏姫に弟っていたっけ、と首をかしげましたが。

浜路が伏を狩るシーンはなかなか迫力があります。

ちっちゃな女の子ですけど、かなりすばしっこいので、読んでいる側としては、「おお、すげえ」と感嘆の声を上げてしまいます。

また、しっかりしていない兄と、字は読めないけど金銭等のことにはしっかりしている浜路のやりとりはなかなかユーモアがあふれています。

あとは、兄妹を見守る周囲の人々の優しさや、兄妹の伏狩りを伝えるストーカーのような冥土と様々な登場人物たちもいます。

終盤で浜路と伏が心を通わせるシーンでは、伏だって人間のこころを持っているんだなと思わせます。

 

■最後に

「里見八犬伝」を現代風にアレンジしたというより、「里見八犬伝」をモチーフにした新たな物語りです。

ちっちゃな女の子のしっかりぶりと、伏狩りを行うときの迫力さは目を見張るものがあります。

エンターテイメント的にもすごく面白い作品です。

 

-古典, 小説, 文庫本, 時代小説, , 歴史

執筆者:


comment

関連記事

no image

【無戸籍とは】10.『無戸籍の日本人』 著:井戸まさえ

こんばんは、トーコです。 さて、今回で10冊目の紹介です。つたない文章ですが読んでいただきありがとうございます。 これからもまだまだ紹介しますので、どうぞよろしくお願いします。 記念する10冊目は、井 …

【何とも言えない日常】199.「どこから行っても遠い町」著:川上弘美

こんばんわ、トーコです。 今日は、川上弘美の「どこから行っても遠い町」です。 どこから行っても遠い町 (新潮文庫)   ■あらすじ 都心から私鉄でも地下鉄でも20分ほどの小さな商店街を舞台に …

【SFのような話】224.「死にがいを求めて生きているの」著:朝井リョウ

こんばんわ、トーコです。 今日は、朝井リョウの「死にがいを求めて生きているの」です。 死にがいを求めて生きているの   ■あらすじ 南水智也は植物状態になり、病院に入院している。 そこに、幼 …

【元気が出る本】136.『ランチのアッコちゃん』著:柚木麻子

こんばんは、トーコです。 今日は、柚木麻子の『ランチのアッコちゃん』です。 ランチのアッコちゃん (双葉文庫)   ■あらすじ 澤田三智子は小さな出版社の派遣OL。ランチの時はいつもお弁当を …

【きらめく出会い】147.『二十五年後の読書』著:乙川優三郎

こんばんは、トーコです。 今日は、乙川優三郎の『二十五年後の読書』です。 二十五年後の読書   ■あらすじ 響子は1人で生きている。たまに谷郷という作家との逢瀬を重ねてはいるが。 ある日ひょ …