こんばんわ、トーコです。
■あらすじ
この物語の主人公は林真理子のお母さんがモデルです。
主人公万亀(まき)は大正時代の裕福な家で生まれ育って、教育もしっかり受けました。
そしてものすごく本を読むことが好きな少女でした。
教育も時代のせいで志望する学校に入れなかったり、やっと家を出られると思って教師になったら母に呼ばれて故郷に戻ったり、就職できたと思ったら戦争が始まるし、背丈や受けてきた教育とかで縁談が流れる。
やっと結婚したら満州で貧しい暮らしをし、夫が戦争に行ってしまうと同じ時期に子供を身ごもるも、故郷で物資のない生活を送っているうちに子供がなくなる。
と結構苦労の絶えない人だが、最後は闇屋から転じて本屋を開業し、夫も無事戻ってきて女の子が生まれました。
ちなみに女の子は著者のことです。
■作品を読んで
この作品は、いい意味で著者のイメージを破壊した作品です。
なんとなく、この人高飛車でトーコには縁のなさそうな作家だな、と思っていましたが、この作品を読めばそうでもない人なんだな、と思わせてくれました。食わず嫌いを克服できたのかもしれません。
偶然にも新しい表紙の文庫本が発売したようですが、私が読んだのは古いバージョンでした。
昔この本を原作にしたドラマがやっていてその時に買ったので、早10年は経過しています。
主人公はここまで自分のことを結構不自由な時代に決めてきました。それは本当にすごいことです。
トーコが主人公みたいに1人で生きていたいと思う人間にとって戦前という時代は相当生きずらい時代のような気がします。
本を読むのが好きな万亀は小さなときも、進学しても、教師として相馬に赴任するときも、実家に戻ってきたときも、東京での会社勤めのときも、満州での新婚生活でも、さらには戦後のどさくさの時期にも…。
いつの時代にも本がそばにあって、どんなときでも励ますように、支えるようにしていました。
すごいヒロインですよね。ある意味強い…。
読み返して印象に残っているのは教師のときのセリフです。
「夜、ひとりで本を読む幸福のために、人は昼間働くのだ。昼、嫌なことにも耐えられるのだ。」
うんうん、と思わず同意してしまうセリフです。
やはり本を読むことは人を幸福にし、嫌なことも忘れさせます。
ひとり静かに本が読めるときってすごく時間があっという間に過ぎてしまいます。
なんというか、肩の力が抜けてほっとします。しかも精神は何かで満たされているんですから。
■最後に
著者の林真理子さんはたまにラジオ深夜便で語っていることがありますが、あとがきにもあるようにすごく人を気遣ってどこか優等生な感じのする方です。
なんとなくこの主人公(実母)と雰囲気が似ているように思います。
すごく時代に翻弄され続けた方です。なかなかやりたいことができなかった方でもありました。
だからこそ、今っていろいろなことができる機会がたくさんある。うまく生かしたいと思えます。
また、本というのは人の人生にこんなにも寄辺を与えてくれるものなんだなと再確認できます。