こんばんわ、トーコです。
■あらすじ
オースター自身の幼少期から現在まで、家族の死、自動車事故のことや過去の恋愛のことや自分の住んでいた家のことなどを、「君」という2人称を使用して語っている。
■作品を読んで
著者自身の過去の描写がすごい。
自分自身のことを「君」と呼び掛けることで、なんというか自分のことなのに、3人称ほど他人事のように聞こえないけど、1人称ほど自分のことのように聞こえない。
2人称ってすごく不思議です。自分のことばかり見ているように見えるわけでもなく、客観的になりすぎない微妙なラインで自分を見ることができます。
さすが、ポール・オースター。
また、著者が全く作品を書けなくなった時期に見たダンスについての感想をこのような言葉で述べています。
「いまだに訳がわからない理由ゆえに、何ものにも縛られぬ空っぽの空気の中を突如墜落していくことで、自由と幸福の感覚に君は包まれていた。」
すごくなんだかわかります。
トーコも最近ミュージカルを見たのですが、終わった後の感想は1言で言い表せることができず、素晴らしいんですが、何といえばわからず、そのミュージカルが終わった後どこかに寄ろうとしていたこともすっかり忘れ、家にまっすぐ帰ってしまいました。
ただ、何といえばいいのかわからない代わりにすごく心地はよかったので、きっと幸福な感覚がそこにはあったのだと思います。
著者はこのダンス鑑賞が終わってからまた作品を作ることができるようになったそうです。
このミュージカルを見たことで、作品を書けなくなった理由がはっきりとわかったからだと思います。
その後の活躍はこうして作品が読めるから、一目瞭然です。
■終わりに
オースターを知る方は、この人はこういう人生を送っているからこういう作品が書けるんだと感じられます。
オースターを知らない方も、自分の過去を振り返るというのはこういうことなんだということがわかります。
この本は「ある身体の物語」ですが、「ある精神の物語」ということで、「内面からの報告書」も発行されます。トーコも後で読もうかと思っています。
併せて読んでみてはいかがでしょうか。