こんばんわ、トーコです。
今日は、梨木香歩の「やがて満ちてくる光の」です。
■あらすじ
著者が作家としてデビューしてから初期のころからの雑誌等に連載したエッセイをまとめたもの。
書かれているテーマは共通しているとは言えませんが、作者の人となりが分かる作品です。
■作品を読んで
ちょっと小ネタですが、最近ある本屋さんの特集で、リンドグレーンとある少女の20年にわたる手紙のやりとりをまとめた書簡集が置かれていました。
若干びっくりです。ちょうどこの作品にもそういうものがあるという記述があったので。まあびっくりポン。
少女の名前はサラ。サラはこの書簡集を出版することに決めました。
自分の悩みを見ず知らずのリンドグレーンにさらけ出していて、正直少女時代のこととはいえ嫌な部分もあったと思います。
でも、出版を決めた理由は「自分にとって大切なもの」を選び続けたリンドグレーンの勇気を想ったから。
締めは、リンドグレーン自身は出版には反対したが、公開を決意したサラを誇りに思うと。
そんな内容でした。
偶然って面白い。とはいえ、本屋さんで選んだ理由は覚えてませんが。
個人的には冒頭のエッセイが1番衝撃でした。
守りたかったもの。著者の幼かったころから、カエルの話、そこからの小中学生が出会い系サイトに書き込んでいること。
一気にワープしたな、と思うのと同時にいきなりこれ来るか、と思いました。
それに対しての言葉です。
暴力と性に関する、特に性の商品化に関する情報の氾濫で、その壁はないに等しい。
…それが大切なものだなんて、この圧倒的な情報量の前では、誰もその子に語らなかったに等しいのだ。
なんだか昨今のスマホを使った怪しい大人による子どもを狙った犯罪は少しずつ増えているようにも思います。
もちろん気をつけろ、気をつけろと言っても、聞く耳を持たない子どもだっているはずです。
そりゃ、目の前にいろいろな情報がこれだけ拡散しているんだもの、子どもたちがどれが良くて、どれがダメでという取捨選択ができるようにしないとダメなんだと思います。
というか、この情報の取捨選択って大人も実際のところできてませんけどね。
トーコの子どものころよりも今の子どもたちの方がよっぽど大変な世の中になりましたね。
自分の子どものころが情報の洪水に若干巻き込まれつつありましたが、少なくとも子どものころまだガラケーが主流だった世の中でよかったな、なんて思ってしまいます。
いわゆる情報リテラシーの向上でしょうね。
それにしても、これだけ情報があれば量的にはほとんど暴力的…。
そのほかにも、旅のこと、おそらく書評のコーナー用のもの、その時に執筆していた本など多岐に渡るラインナップです。
なんというか、すごく考えている方だなと思います。語弊がある言い方ですが。
日常のこと、世の中の事。感じていることをうまくきちんと残しています。
家守奇譚という作品の朗読会のエピソードは、文字にしないと消えてしまうから書いたという結構正直な話。
でも、仕事は黙々とやればいつかは終わる。この小説はまだ紹介してませんが、確かにそんな記述があった気がします。
元ネタがよくわかりました。
■最後に
著者の人となりがよくわかる作品です。著者の平成時代が映し出されています。
考えてきたこと、感じてきたことがたくさん詰まっています。
[…] 202.『やがて満ちてくる光の』 […]