こんばんわ、トーコです。
今日は、斎藤由香の「窓際OL 人事考課でガケっぷち」です。
窓際OL人事考課でガケっぷち (新潮文庫) –
■あらすじ
著者の斎藤由香さんは、「どくとるマンボウ」シリーズの北杜夫の娘さんです。
北杜夫といえば、どくとるマンボウのほかにも躁鬱病をいち早く公開した人です。
そんな父上を見て育った著者は会社員になることにし、サントリーで働いています。
文才は父譲りだが、会社でのポジションは自称窓際。
同僚や後輩がどんどん出世していく中、崖っぷち度は高くなる一方…。
さらにエッセイの後半は父北杜夫の介護がやってきます。
著者にとっては、あっちもこっちもドタバタ続きなエッセイです。
■作品を読んで
なんだか、今の世の中を表しているようなエッセイです。
多分多くの方が会社員生活と介護に思い煩っていることでしょう。
それにしても明るく笑い飛ばせることがたくさんあります。
会社では「マカ」を宣伝するも、上司からはマネージャーになる人を優先にするための評価が行われているらしく、著者の行う広報活動と会社の求めるマネージャー候補生とは合わないという現実にブチ当たる。
今の会社は何となくだが、こういった評価を行う会社が多いようにも思います。
会社が何を評価の軸にしているのか。それを履き違えていたら、どんなに素晴らしい成績を残したとしても評価に全くつながりません。
そのため、出世や給料アップ、ボーナスアップといったことが全く反映されず、一体なんで自分は評価されないんだと思い煩う方が出てくると思うのです。
まあ、著者の場合は会社がOKしているとはいえ、週刊誌などで会社の上司をネタにしたエッセイを執筆しているのですから、何となく別な要素も作用している気がします。
それでも自分は出世できず、どんどん置いてけぼりになるのもしんどいことでしょうな。
いつか自分もそうなるんだろうな…。
あと、著者は精神科医の従兄からこう言われます。
「我が国において、躁鬱病・鬱病をもっともよく観察した人の1人。その体験は貴重です。」
確かに。その通りです。
北杜夫はすごかったらしい。
北杜夫とかかわりのあった作家たちは、「よくぞあんな家で育った」と言ったそうです。
そんな奇人・変人な父を持つ著者。当時はだれも躁鬱病や鬱病の存在がわからなかった。
しかし今の世の中、自殺者は3万人います。躁鬱病や鬱病に罹っている人はもっとたくさんいる病気になってしまいました。
人間は心を患っても元気で生きていける。鬱病とはうまく付き合えばそんなに恐れることはないそうです。
やはり経験者の言葉は重みがあります。
心を患いそうになったとき、きっと思い出すことができないけど、思い出したい言葉です。
他にも楽しいあだ名をつけられてしまった著者の上司たち。キャバクラ課長に胃袋部長、小ネズミ部長。
なんだかすごいあだ名。しかもそれを週刊誌のエッセイで書いているのだから。
でもこのやり取りすごく面白いです。会社だって何気ないやり取りとかあります。
そしてこの上司たちに信頼されていることがわかります。
■最後に
あまり紹介できなかったけど笑いあり、生きているなかでの共感多しのエッセイです。
今の身の回りのことで、けっこう笑い飛ばせるヒントが見つかるかもしれません。
会社や家のことで疲れている方におススメです。