こんばんわ、トーコです。
今日は、井戸まさえの『日本の無戸籍者』です。
■あらすじ
日本には現在推定で1万人の無戸籍者が存在することをご存知でしょうか。
多くはその家族の持つ事情(女性の再婚禁止期間、貧困等)により、生まれた子供の出生届を提出せず、その子は無戸籍になってしまったのです。
無戸籍になると、日本政府からの行政サービスや銀行口座を開くことも、ケータイ電話をもつこともできません。本来日本人であれば享受できた権利を行使することができないのです。
■作品をよんで
トーコは、以前井戸まさえ著の以下の作品を紹介しています。良かったら併せてどうぞ。
こちらでは、実際に無戸籍者の人が戸籍を手に入れるまでの話、あるいは戸籍の取得を断念したり、戸籍が発行されたとたんいきなり年金や保険料の滞納金を払えと請求書が来たりなどの、様々な話があります。
この作品は前作「無戸籍の日本人」の続編に近いかもしれません。
ただし、前作よりも無戸籍問題に対して深く掘り下げています。
あらすじより、無戸籍者が発生した理由の1つは、父が誰かを決める嫡出規定や離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子になるという再婚禁止期間といった民法によるもの。
2つ目は貧困や虐待が疑われるケース。3つ目は戦争・災害等で戸籍が紛失するケース。
4つ目は特殊ケースで、皇族には戸籍がありません。なので、皇族が結婚すると、皇籍離脱とよく言いますが、皇籍を離脱し、民間人と結婚して初めて戸籍が作られます。
まず、民法の場合。民法772条では、婚姻の成立から200日以内を経過した後、婚姻の解消から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定される、と規定しています。
この法律の凄いところは、子の父親は妻の夫であることです。なにを当然なことを言うか、と思うことでしょう。
世の中、普通の家族ばかりではありません。例えば、離婚後どう考えても前夫の子ではないのに離婚後300日以内に生まれたとか、できちゃった婚したとか。
DNA鑑定をすれば子の父親は誰か容易にわかる時代に、果たしてこのルールは要るのやら。
それでも、子の「父」は国が決める、それが日本のルールです。
貧困・虐待のケース。是枝監督の映画に「誰も知らない」という映画がありましたが、子の映画はどうもこの問題も絡んでいた事件をモチーフに映画化したそうです。
無戸籍の子供たちが生きる世界が描かれています。学校にも行けず、行政も近所の人からも存在を認知してもらえない。そんな中で生きる子供たちの姿が描かれています。
最後の戦争や災害で戸籍が紛失したケース。
第二次世界大戦後の混乱の中で、朝鮮や中国、樺太に住んでいた日本人の一部で戸籍のない人もいます。帰国がかなわず故郷に帰ることができなかった人、一時帰国という形で実現できた人など、様々な事情があります。
また、東日本大震災の津波に流されて役所から戸籍データが紛失しました。幸い法務局に保管されていたバックアップがあったから、それをもとに戸籍データを復旧したそうです。
それでも、2011年2月から震災当日までのデータは法務局に送付していないので、この分のデータは紛失しています。
なんというか、戸籍は平城京のころからずっとあるものですが、現代においては必要なものなのか、という疑問さえ持ってしまいます。
無戸籍の人が数多く存在すること、戸籍というのは今の世の中にきちんとした意味を持っているのかを改めて問いかけます。
■最後に
現在日本には正確な数はわかりませんが(当然と言えば当然)、無戸籍の人は多くいます。
無戸籍者の場合、成人してから就職、結婚などにおいて戸籍の有無が問われ、戸籍がないことが障害となってしまいます。
また、戸籍をめぐっては災害時だけではなく、二重国籍などの様々な問題があります。
多くの人に知ってほしい問題です。