こんばんわ、トーコです。
今日は、沢木耕太郎の『旅のつばくろ』です。
■あらすじ
国外を旅することが多かった著者が、ある雑誌の連載をきっかけに日本を旅し始めた。
旅をしながら、様々な場面での交流や著者自身のことについて思いを馳せていく…。
旅はまだまだ続く。これは著者にとっては1つのまとめなのかもしれない。
■作品を読んで
この短編集は、ずいぶん前に江國香織の「旅ドロップ」の中でも話しましたが、JR東日本の「トランヴェール」という雑誌での連載をまとめたものです。
「旅ドロップ」の中でも語りましたが、東北へ出張に出かけるため、担当している他の仕事が一切ストップし、どうやって進めればいいのやらと思っている中で新幹線の中で読むこの雑誌がすごく救いになっていました。
特に、この著者の連載を読むのが非常に楽しみで、ほっとしながらちゃんと旅に出たいな、と現実逃避をしていたころが懐かしいです。
なので、こうして本として出てきてくれて、マジでありがとうございます。
さて、戻りましょう。
驚きました。著者にとっての理想の旅がまさかの「ダーツの旅」だなんて。
とはいえ、ダーツを投げて刺さった場所に行くという非常にシンプルですが、普通はそんなことはしません。
大抵は事前に目的地を決めて交通手段やホテルを決めて出かけるので、言われてみればその通り。
行き当たりばったりで行けるってすごいし、そんな旅は確かにできない。
また、著者は旅のエッセイとともに著者自身のこともいくつか書いています。
2つびっくりしました。
びっくりその1は、大学を卒業してたった1日で会社を辞めて、大学の恩師の紹介でフリーランスのライターしてスタートしたという著者の経歴です。
1日ってもはやギャグの世界。なんか、達観しちゃったのでしょう。
でも、このきっかけがなければ著者の様々なルポが読めなかったかもしれないのですから、偶然に導かれたのでしょうね。
びっくりその2は、著者にとって初めての旅は16歳の時の東北一周旅行だったことです。
12日間で一周する+高校生の1人旅のため貧乏旅行。
男の子だからできたのでしょうか、12日のうち3日は駅構内での野宿旅という結構根性ある旅です。いや、これ男子だからできるっていう旅ではない…。
北上駅の描写で在来線の待合室の描写がありました。
トーコとしては、あまり思い出したくもない出張先の最寄駅だった北上駅。
この待合室で待てば南下し、家に帰れるという希望を持って待っていた場所。
改めて北上駅の待合室の描写を読むと、「そうそうこんな場所、そうそう。懐かしい」なんて思ってしまうもの。
でも、人が変われば思う風景は違うもの。
著者にとっては50年以上も前の旅で野宿していた場所。そこでホームレスと思しき人に助けてもらい、性善説の心棒者になったとか。そんな思い出がある場所。
「懐かしい」の意味がこんなに違うとは。想いの種類って様々だな、って思いました。
最後に、著者の仕事への矜持を書いておきます。
たぶん、私はどんな小さな仕事、どんな短い文章でも手を抜いたことがないはずだ。あるいは、手を抜かないと思い決めた瞬間、ライスワークがライスワークでなくなっていたのかもしれない。
どんな仕事も手を抜かずにやってみる。それが1番いいのかもしれません。
ちょっとだけ、励まされました。
■最後に
意外にも日本国内を旅していないという著者の過去を確かめ、新たな発見が詰まった旅のエッセイです。
旅はやっぱりいいものだと再確認ができる、著者の様々な想いが読み取れるエッセイです。
[…] まずは、「旅のつばくろ」シリーズ第1弾です。242.『旅のつばくろ』 […]