こんばんわ、トーコです。
今日は田丸公美子の『シモネッタのどこまでいっても男と女』です。
■あらすじ
著者はこの世界ではけっこう有名なイタリア語通訳者です。
ただ、米原万里(以前紹介しています。14.『打ちのめされるようなすごい本』著:米原万里より)曰く、国際会議の場で胸元の開いた派手な衣装で登場したり、会議中にも下ネタでうまく場を和ませることから、米原さんから下ネタの女王「シモネッタ」をもらうほどの方らしい…。
そんな方の書いた家族に関するエッセイです。
笑いもありますし、親世代の戦争という切っても切り離せない話に、田丸さんのイタリア男をめぐる話に盛沢山なエッセイです。
■作品を読んで
夫婦を描いた章では笑いが止まりませんでした。
旦那さんを選んだ理由は「暑かったからよ」
これはロシアの小話の「寒かったからよ」をもじったらしく、ロシア語通訳の米原万里さんには大うけしたらしいです。
そりゃそうだ、ロシア語通訳なら意味がいやでもわかりますから。
著者が当時住んでいたアパートにクーラーはなかったらしく、さらに体調を崩していたそう。
助けてくれたのは当時の上司で現旦那さん。病院に連れて行ったり、アパートに泊めたりしたそうです。
ちなみにそのアパートには1974年当時珍しかったクーラーがあり、そのクーラーが気に入ってそのまま結婚したとか。
ただ、旦那さんの貯金は田丸さんの貯金残高の2桁も少ないという事実を発見し、悲劇の幕開けを感じたそう。
だから結婚の理由は「暑かったからよ」なのだそう。
ある意味説明するのが簡単でうらやましいです。
が、それだけで結婚していいのかよ、というか旦那さんかなり見掛け倒しすぎて金銭的な苦労するの目に見えてませんか?と思ってしまうほど結構突っ込みどころ満載な話ではありますが。
でも田丸さんなりに教訓を得ているのでしょうね、この小話の最後には必ず教訓めいたオチで締められています。
他にも田丸さん自身の親と旦那さんの親の話もあります。
親世代にとって戦争がそれだけまだ近い場所にあるのでしょうね。
だけど、すごく重いテーマのはずなのに面白く読めてしまうのは田丸さんの持っているユーモアが助けているのだと思います。
すごく読み応えあります。なんというか、女って強いですね。
どんな状況も糧にして明るく生きているんですからね…。
最後はイタリア男をめぐるエッセイだが、おいおい大丈夫なのかこの人と思いながらも何人かのイタリア男と文通を続けていたそう。
しまいにはSNSを通じてその時の文通相手の娘さんにたどり着きます。
娘さんはなんでもつい最近亡くなったお父さんのことを知りたいようでした。
だけどきちんと答えている田丸さんもすごい。
この人本当は人間愛にあふれているんじゃないかと思えてくる。
旦那さん見捨てないし、イタリア男たちとも文通するし、ちゃんと娘さんの問にもこたえているし。
なんかすごいぞ、この方。
■最後に
田丸さんがイタリア語通訳の方のせいでしょうか、すごく下ネタを扱うのがうますぎです。
さすが、シモネッタ…。
夫婦というのは「人には添うてみよ」だそうです。
うまくいかないこともままありますが、1度縁あった誰かと添い遂げることも悪くないと思わせてくれます。
それよりも、突っ込みどころ満載で笑いが止まりませんがね。
笑いたいときにはおススメです。