こんばんわ、トーコです。
今日は辻村深月の『朝が来る』です。
■あらすじ
栗原佐都子は夫の清和と6歳の朝斗と家族3人平穏に暮らしていた。
ただし、朝斗は養子ではあるが、それでもごく普通の家族として生活していた。
そんなある日、佐都子のもとに「子供を返してほしいんです」という電話がかかってくる。
電話の主は「片倉ひかり」。彼女は朝斗の産みの親だった。
■作品を読んで
驚くなかれのテーマの重さです。
最初の章は朝斗が幼稚園で何も悪いことをしていないのに疑いの目がかけられた場面から始まります。
佐都子は朝斗の「ぼくはやっていない」という言葉を信じます。
佐都子も途中で息子は嘘を言っているのではないかと疑うこともありましたが、朝斗は何もやっていないことがわかり、ほっとします。
それは朝斗も同じです。「やっていない」を誰にも信じてもらえない中、唯一母親だけが信じてくれました。
朝斗も同様に親を信じます。
すごく家族の絆が強固だなと思わせます。
佐都子と清和の夫婦の話は、この現代においてはおそらく他人ごとでは済まない部分が多いです。
不妊治療についておそらく誰も教えてくれないでしょうから、この作品は結構参考になる要素が非常に多いかもしれません。
まず、子供が欲しいと思っていざ不妊治療を行うも、費用的な負担も精神的な負担はかなり大きいです。
さらに言えば、不妊治療は仕事の合間を縫って行わないといけません。
不妊治療を行う年代はおそらくですが、35歳から40代前半の方だと思います。この年代の方って、意外と仕事で忙しいはずです。
そして2人は不妊治療を断念しました。
「結婚して子供を産むという当たり前の図式が、実は当たり前ではないこと」
が私たちに突き付けられます。
それでも子供をあきらめられず、養子縁組を「ベビーバトン」というあっせんする団体の説明を受け、よく考えたうえで子供を受け入れるという選択をします。
一方、産みの親の片倉ひかり。
彼女は14歳のときに出産します。
通っていた中学校の同級生と付き合い、SEXをし、妊娠をしてしまいました。
そして妊娠発覚が遅くなり、中絶ができす、そのまま出産しました。
中学生のため育てることももってのほかのため、何より親も妊婦になってしまった娘を隠したかったのでしょう。
出産時期が近くなったら「ベビーバトン」に預けられ、そこの支援を受け出産し、子供はすぐに佐都子と清和の夫婦に引き取られます。
それからのひかりの人生は大変なことになります。
普通の中学生に戻っても家に居づらくなり、ついに17歳に家出します。
親にとってはひかりは自分たちの思い通りならなかった娘、現実を見たくないのでしょう。
向かった先は「ベビーバトン」でした。
しかし、「ベビーバトン」は解散することが決まっていたので、期限付きですが置いてもらうことになりました。
それから新聞配達、ホテルの清掃員として働いていました。
が、新聞配達のアルバイトの時に友人の保証人になってしまったことが原因で払わなくてもよい借金のために借金取りに追われ、ついにはホテルのお金を盗んでしまいます。
ホテル側からお金のことを責められ、ひかりが思い出したのは栗原家のこと。
「子供を返してほしい」と脅してお金を得ようと考えたのでした。
なんというかすごい話です。展開が…
それでも最後は大円団な感じになりましたが。
■最後に
引き取る側の家族と引き取られる側にもそれぞれ事情があります。
それでも納得し、事情を乗り越えます。
どちらの側もいい意味でも悪い意味でも人生が変わります。
それから不妊治療は大変だということがよくわかります。
家族を作ること、形づけることがこんなにも大変なんだということがわかる作品です。