こんばんは、トーコです。
今日は、石井桃子の『プーとわたし』です。
■あらすじ
著者の石井桃子さんは、「クマのプーさん」や「ピーターラビット」シリーズなどを翻訳した方で、児童文学の普及に努めた方です。
この作品は、主に「クマのプーさん」翻訳秘話、海外での児童文学を視察する旅などのエッセイを中心に収録されています。
■作品を読んで
まず、「クマのプーさん」との出会いが衝撃的です。
簡単に言うと、犬養邸にあった英語版の「プー横丁にたった家」を犬養家の子供たちに翻訳して読み聞かせたことがきっかけとなって、翻訳版を出版したそうです。
しかしまあ、図書館などに行けば翻訳版のプーさんがあるのですが、挿絵がディズニー版と違ってまあかわいくありません。
著者も、プーさんの挿絵を見て「クマとブタの合いの子のようにも見える生きもの」と評しています。ちょっとくすくす笑ってしまいました。
プーさんを初めて読んだとき、プーの世界に一瞬で引き込まれたそうです。それくらいドラマティックな出会いだったそう。
しばらくして、といっても最初に読んでから7年ほどが経過してからですが、プーさんは岩波書店から出版されることになりました。
社長の岩波さんはこれを読んで、「石井さんはこれまでどこかで本を出されましたか」と聞かれたそうです。著者はこれが初めて出版する作品だったそうなので、テストはできないのに一体どういうわけだかと首を傾げたそうです。
それだけプーさんという作品が著者にとっての魔法のかたまりで特別な作品だったのです。
やがて、黄色のこぶたのように見えるキャラクターをきっかけに、子供の本の翻訳・編集する仕事を始めていきます。
また、著者はプーさんのほかにもピーターラビットや、バージニア・リー・バートンのちいさいおうちなども翻訳しています。
ただ、ピーターラビットを翻訳するのは大変だったそうです。おそらくピーターラビットの絵本って単語が結構少なくて、中学生でも解釈はできるからだと推測します。つまり、文章があまりにもシンプルだから、だと思います。
そんなわけで、プーさんの翻訳とピーターラビットの翻訳は真逆だったそうです。
プーさんの翻訳が面白いようにのめりこんだのに、ピーターラビットではそうでもなかったのにはびっくりです。ミートパイにされてしまうわよ、ということばの裏にそんな苦労があったようです。
児童文学の普及のため、ニューヨークの図書館に視察したことをまとめたエッセイでは、図書館の在り方から違いがありすぎて驚きました。
特に児童文学の司書は、子供たちにおススメの本を聞かれてもすぐに答えることはもちろんのこと、児童文学の批評家としての役割を求められています。
継続的に、毎日児童文学を見ています。図書館に置く本を選ぶ司書の意見は欠かせないものです。いいものを子供たちに読ませたいものです。
確かに、司書に意見を求めるのは合理的だなと思いました。それにしても、日本の図書館ももう少し司書の役割を重視した方がいいのではと思います。
日本に帰国してからは、私設図書館を開き、ニューヨークで見た図書館を再現していこうと試みます。すごい行動力…。
凄い功績を残しているはずなのにそれが微塵も感じさせないのは、著者の人柄なのだなあと思います。
■最後に
プーさんが世に出てから、作者も本格的に翻訳家としてスタートしました。
また、児童文学の普及のため、様々な活動もされていました。
児童文学を見つめ続けた人の語るエッセイです。
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