こんにちは、トーコです。
今日はサマセット・モームの『一葉の震え-「雨ほか、南海の小島にまつわる短編集」』です。
■あらすじ
タヒチ、ハワイなどの南の島を舞台にした短編集。
南の島の雰囲気は様々な悲喜こもごものお話が繰り広げられています。
■作品を読んで
サマセット・モームが生きていた時代の南の島のイメージがそのまま投影されているような気がします。
今は文明が発達しています。なので、南の島に旅行しても現地の人々はきっとスマホを使っていることでしょう。
サマセット・モームの短編の中で1番有名なのは副題にもなっている「雨」です。
この作品は、悪天候のため2週間の逗留を余儀なくされた医者夫婦と宣教師夫婦。
2組の夫婦はしゃーなく部屋貸しをしている家に泊まることになりました。
とりあえず当面の宿を確保し、落ち着いたところで、何やら隣の部屋が騒がしい。
トンプソンといういかがわしい職業の女性がいました。
宣教師は彼女を本国に送り返すよう手続きを取り、更生させようとあれこれと手を尽くします。
が、物語の最後で宣教師は自殺していました。
最後の2文がすべてを語ります。
一体どういう経緯で宣教師が死を選んだのかを医者は理解します。
雨がずっと降り続き、湿気を帯びる。日本も梅雨の時期が来るとジメジメとした季節がやってきて、なんか憂鬱な気分になります。
「雨」という短編でも、降りやまぬ雨に翻弄される人々を静かに描いています。
表現の巧みさがかなり出ています。この表現だけで、2行くらい必要な描写もたった1つの比喩で片付けてしまっています。
読んでいてすごく色あせていない作品だなと思いました。
個人的には、「エドワード・バーナードの凋落」という作品が好きです。
エドワード・バーナードはイサベルという女と婚約していたが、家が没落し、南の島の会社に就職することになり、シカゴを離れた。
2人の親友であるベイトマンはエドワード・バーナードの様子を見にタヒチに向かう。
ベイトマンは衝撃の事実を知ります。
エドワード・バーナードは会社を辞め、小さな店の従業員として働いていた。
しかもシカゴに帰る意思はなく、南の島で混血の娘と結婚し、小さな家を建て、植物を植え、家族に囲まれた生活を夢見ています。
イサベルに事の顛末を話し終えた後、ベイトマンはイサベルに結婚を申し込みます。
とまあ女子向きの結末なのもあるのでしょう。以上がトーコの好きな短編です。
それにしても夢ありすぎの結末です。
ただ、最後のベイトマンとイサベルの思い浮かべる未来とエドワード・バーナードの思い浮かべる未来の差が激しすぎて面白いです。
■最後に
サマセット・モームはクライマックスがあり、最後に読者の意表をついたひねりを加えたかったそうです。
確かに、最後の結末は「うわ、こう来ましたか」と唸るような作品が多いです。
作者の技が光る短編集です。