こんばんわ、トーコです。
今日は、スティーヴン・キングの『書くことについて』です。
■あらすじ
本書は、著者の生い立ちから作家デビューし、売れるまでと現在に至る書く技術についてと、1999年の大事故について語られている。
■作品を読んで
読んだ感想は、もしあなたが作家を志望しているなら、是非読んだ方がいいです。
世界的作家の文章の書き方なる本を読める機会はそうそうないでしょう。
また、アメリカの出版の世界がだいぶ日本の世界とは違うことに驚くと思います。
アメリカでは、作品を書いてペーパーバックになった時に契約金を払うようです。
日本だと印税がどうのこうのだったと思うので、契約金って払われるのでしょうか。
まあ、世界共通でしょうが売れる前の作家に相場がどんなものかはよく分からない世界ではありますが。
この作品は、作者の生い立ちから作家デビューし、アル中から立ち直るまでの第1章、書くことの技術について書いた第2章、交通事故から奇跡的に生還するまでの過程を描いた第3章に分けられます。
この分け方は超ざっくりです。訳者がちゃんと章立てを示しています。
以下は基本の技法を語っておきながら最後はここか、と絶句した部分です。
才能は練習の概念を変える。どんなことでも、自分に才能があるとわかると、ひとは指から血が出たり、目が飛び出しそうになるまで、それに没頭する。
…けっこう厳しいと思う者もいるだろうが、しかるべき才能があり、それを楽しむことができるのなら、まったく苦にならないはずだ。
職業として生業にしている人も、部活動や何かの趣味で頑張っている人も基本は一緒。
根っこは一緒。ある程度の才能がないと、努力しても続かない。しかも楽しみながら上達すれば…。
もはやここまで来れば掛け算です。才能×練習×楽しめる=凡人の何倍でしょうか。
考えたくありません。これは圧倒的な差になるのですから。そして勝てません。
それをまさかの世界的な作家が言ってしまうのですから。説得力あり過ぎです。
ちなみに、このエピソードは7歳の息子さんにサックスを与え、練習する様子を見て学んだことをモチーフにしています。
結局、7か月やらせて自分から練習することをしなかったので、息子さんには止めるかと言ったそうです。いい親だな。
また、著者はこうも言います。
すべての小説はひとりの人間に宛てた手紙である。
ひゃー、奥が深い。意中の読者に宛てた手紙なのだそう。
著者の場合は、奥様のようです。作家デビュー前の貧しい時代から、アル中期、交通事故などをずっと支え続けた人でもあります。そして、何より建設的な読者でもあるようです。
こうした方がいいという意見もありますが、この作品を読むとき好きそうな場面はどこで、そこの描写を頑張ってみたり。作家も小説の中でいろいろなことをやっているようです。
最後に、著者にとっての書くことは何なのでしょう。
それは、幸せになることです。著者はこの作品の中で、それを学んだかを記しています。
そして、読者に書くことを促しています。いや、かえってこれは書ける気がしないのですが…。
■最後に
作家についてと書くことについてがよくわかる本です。
はっきり言ってここまで書いて大丈夫か、と心配になります。
巻末にはベストブックリストがありますが、半分くらいの作品は日本語に訳されています。
選書の良さにも脱帽します。