こんばんわ、トーコです。
今日は、マルグリット・ユルスナールの『東方綺譚』です。
■あらすじ
フランスの作家で、須賀敦子さんの小説を読んでいる方ならおなじみのマルグリット・ユルスナール。
この作品は、ユルスナールから見たオリエントの国々に伝わる伝記をもとにした短編が収録されています。
■作品を読んで
フランス人から見たオリエントなので、日本や中国もオリエント。若干感覚が狂います。
舞台はインド、中国、ギリシア。日本もありますよ。
特に日本は、なんとびっくり源氏物語。しかも、光源氏の隠遁した後の話。
光源氏が隠遁した後の話は、雲隠の巻と呼ばれています。しかも、意図的に紫式部が描かなかったのか、それとも現在までの間に焼失したのか不明といういわくつきの巻です。
ユルスナールさん源氏物語をよくご存じで、よくこの巻を選びました、と思わずツッコミたくなります。
でも存在しない巻を書くというのも、まあやりやすいのでしょうね。
物語は光源氏が隠遁し、京から人里離れた場所で暮らします。
そこに、源氏の妻の1人花散里がやってきます。
はじめは源氏に追い出されてしまいますが、ほどなくして源氏の視力が衰えて、ほとんど見えなくなってしまいました。
そこにぼろを着た花散里が源氏のもとを訪れ、世話をします。
しばらくして光源氏は亡くなります。ただ、皮肉なもので、花散里の名を思い出すことはありませんでした。
光源氏からすれば、目の前の世話をしている女が花散里だったとわかっていたかのごとくです。
以上が「源氏の君の最後の恋」という作品の中身です。
それにしても、ユルスナールさん、絶対に源氏物語をそこそこ読んでますよ、これ。
最後の源氏が愛した女たちへの懺悔がつらつらと出てこないでしょ。
いくら翻訳した方の努力によるところもあるとはいえ。
他にも、様々な話があります。なんだか、結構結末がはかないのは気のせいでしょうか。
皆さん、最後は死んでお亡くなりになってますわね。
まあ、あくまでもこの作品は、オリエント地方に伝わる伝記やら物語をもとに創作したものになっています。
また、インドの神様をモチーフにした作品は、「天上の身の上ながら斬首され、誤って卑しい肉体と接ぎ合わされる女神」というヒンドゥー教の神話からきています。
神様も大変だね、なんだか誰にも理解されない神様も嫌なもんだな、と思いました。
とはいえ、神様も神様とは信じてもらえない姿になっても、神様としての因縁から逃れられず苦しんでいる。
その姿を見た賢者は、不完全なものが悪いことではない、完全なものが己を意識すると説き、やがて神様がほろぶのを予感させます。
ちょっと、この話は印象に残っています。ほかの話も様々なありますが。
■最後に
「東方綺譚」という不思議なタイトルの通り、フランスから見たオリエントの話をモチーフにした作品が収録されています。
なかなか、はかなく、あっけないものを描いている作品です。