こんばんわ、トーコです。
今回は、森絵都の『出会いなおし』です。
■あらすじ
年を重ね、同じ相手に何度も出会いなおすことを描いた「出会いなおし」。
小学校の同窓会に行き、自分の過去と向き合う話、など。
6篇の短編集が詰まっています。
■作品を読んで
著者は10年くらい前トーコが高校生から大学時代にかけては、どちらかというと児童文学系の人かなと思っていました。
「カラフル」しかり、「DIVE!」しかり。ほかの作品も割と読者層が中高生ってイメージでした。
ただ、この10年くらいは読者層も学生ではなく一般向けの作品がだいぶ増えました。
みかづき (集英社文庫)とかは特に話題になっていたような気がします。
さて戻りましょう。
表題作の「出会いなおし」で結構やられます。
イラストレーターの女性が編集者の男性と1回出会って、別れ、再会し、また別れて三度目に出会うという話。
1回目の出会いと2回目の再会のときと比べて編集者の男性の見た目や行動が変わっていました。
イラストレーターの佐和田は軽くショックを受けますが、よく観察すると相手自身は本質的には何も変わっていませんでした。
3回目の再会のときに佐和田は気が付きます。
年を重ねるということは、同じ相手と何回も出会いなおすということ。会うたびに新しい顔を見せてくれること。
人生って同じ相手に何度でも出会って、別れてを繰り返すのでしょうね。
若いときだと相手に成長できている姿を見てほしいし、元気にやっている姿を見てほしい。
何度も出会ってみると、相手自身の新しい部分に出会えて、発見する。それの繰り返し。
こうしてみると年をとるって悪くないし、ちょっとだけ楽しみなんだと思ってしまう。
相手との出会いは一期一会のように見えて、またどこかで逢えるかもしれない。
そのときを楽しみに生きていくのでしょうね。
他にも色々と魅力のある短編が詰まっています。
例えば、妻を失くした男が1人息子と一緒に妻の実家に向かう途中、危うく死にかける話。
でも迷いが吹っ切れて息子と一緒にいることを決意します。
あるいは、地震から原発事故を題材にしているだろう作品。
同じ作品の中で時系列的に見えてこなかったので、なかなかストーリー展開がつかめませんでしたが。なんかSFっぽい。
こんな話もこの人書けるんだ、とちょっと思いました。
小学校の時の苦くていささか釈然としない思い出に向き合うため、卒業以来1度もいかなかった同窓会に行く話。
同窓会に行き、何も言えずに気まずい思いをした15年間が一気に解消されます。
過去の傷口をえぐっては自分にできないと言い訳をし続ける自分に。臆病な自分を甘やかしてしまっている自分に。
そんな経験って、意外とお持ちではないでしょうか。
同窓会で意外と過去の傷を吹っ切ることができちゃうものなんですね。
■最後に
何度でも新しい相手に出会う「出会いなおし」。同窓会に行き、過去を清算する作品など、様々な魅力ある作品が詰まっています。
ひょっとすると1番の驚きは、著者の持つ作品の幅かもしれませんね。