こんばんわ、トーコです。
今日は、平野啓一郎の「マチネの終わりに」です。
■あらすじ
天才ギタリストと誉れ高い蒔野聡史とジャーナリストの小峰洋子をめぐる物語。
出会った当時2人は40歳に差し掛かる年齢でした。
2人は偶然にも出会いますが、いろいろな壁に当たったり、ボタンを掛け違えたりと様々な出来事が2人を阻んでいきます。
■作品を読んで
この2人、実際に会った回数でいうと3回です。でも今の世の中便利なもので、メールやスカイプでコミュニケーションはとれるものです。
このツールを使って距離が離れている2人(聡史は東京、洋子はパリ)もコミュニケーションをとっていました。
洋子は2回目の再会の前にバグダットでテロ事件に巻き込まれ、PTSDになってしまったり、聡史は3回目の再会の時に師匠の祖父江が倒れてしまい、その後一命をとりとめた祖父江の介護を手伝っていました。
このように要所要所で時事ネタだったり、年齢に伴って関わってくる問題など、登場人物たちと同じ年代の方であればかなりリアリティがあるかと思います。
特に聡史の40を目前にしてギタリストとしてこれでよかったのだろか、という先の見えないスランプ状態に陥るところでは身につまされるものがあるかもしれません。
2回目のパリでの再会のとき、聡史は洋子に告白します。存在が自分の人生に深く貫通してしまったと。
かなり深いところまで行ってしまいましたね。なかなかな言葉です。ふむ。
その後、聡史のマネージャーの早苗がひょんなことから聡史のケータイから洋子に一方的に別れてほしいとメールを送信します。
それからは完全にボタンを掛け違えます。洋子も聡史本人が言っていないのにも関わらず苦しみ、聡史も異変を感じ取ることができませんでした。
早苗も聡史のことが相当好きだったのでしょう。ただ、その行動は早苗をはじめ多くの人に苦しみしか生まないのですが。結局聡史はずっと隣で支え続けてくれた早苗と結婚し、優希という女の子が産まれます。
早苗という登場人物にある種のすごみを感じます。それで幸せだというんですから、まあ怖い。
洋子も早苗からのメールのおかげで聡史への想いを断ち切り、婚約者と結婚し、ケンという男の子が産まれました。数年の結婚生活ののち、離婚します。
再び会うまでに5年の歳月がかかりました。2人ともお互いの生活があり、壊せる段階にいないことはよくわかっています。葛藤が様々あったのです。
たどり着いた先には一体何が見えるのでしょうか。そこからは2人しかわからないみたいです。
心のどこかで2人はつながっていたようです。ですが、2人とも現在の自分の状況と相手を思いやりながらの恋愛でした。
■最後に
想いあっているはずなのに、相手の状況と立場を考えると踏み切れず、なかなかお互いの本心までにたどり着くことができませんでした。ただ、きちんとつながっています。
またこの本にはたくさんの言葉がちりばめられています。
大人の恋愛から強さとはかなさがうかがい知れます。
近日中に映画が公開されるそうです。映画抜きにすごくいい本です。