こんばんは、トーコです。
今日は、乙川優三郎の『二十五年後の読書』です。
■あらすじ
響子は1人で生きている。たまに谷郷という作家との逢瀬を重ねてはいるが。
ある日ひょんなことから書評を書き始める。文学を愛するが故の厳しくも愛情のある書評は各界から評判を呼ぶ。
その一方で響子の傍らにはカクテルグラスがあった。
■作品を読んで
以前にも紹介しました。こちらも良かったら読んでください。
なんというか、ふと振り返ると「ロゴスの市」も本作品も「本」がテーマになっているような気がします。見せ方は違いますが。
編集者が持ち込んだ書評を書くという仕事は、響子に新たな世界を見せます。
もともと読書が好きだった響子にとって、書評を書くという仕事を拒みますが、響子の書評は評判を呼びます。
そこには文学への愛情に裏打ちされた悪意のない批評と賛辞があるからです。
きっとですが、著者の考えがものすごく含まれているんじゃないかななんて思います。
ネットとかでこうしてトーコのように投稿している人間がたくさんいます。ちょっと耳の痛い話もありますが。
トーコとしては、多くの人にもっと本を読んでほしくて、そのきっかけの一助になればと思ってこうしてブログを書いています。
こんな不確実でよくわかんない時代だからこそ多くの人に本を読んでほしいです。
こうやってブログという形で書いている以上、悪意のない批評と賛辞を心掛けないといけないのだなと改めて思います。
毎度思うのですが、この著者の文章って今どき珍しいくらい美しいです。「ロゴスの市」もそうですが。
日本語が滑らかによどみなく表現されている文章ってなかなかお目にかかれないなと思います。読んでいて読みやすいし、すがすがしいです。文章も楽しめます。
恋物語かと思いきや、物語の終盤で響子は神経病を患います。
頼りにしていた男たちが同時期に響子のもとから離れていきます。特にですが、谷郷が離れていった時が1番ショックが大きかったようです。
出会った当時、谷郷はカメラマンでしたがやがて作家に転身します。なかなかいい文章を書きますが、近年は往時の姿がなく、響子も谷郷の書く美しい小説を待ちわびています。
谷郷が響子のもとから離れた後、編集者を経由して谷郷の書いた小説が響子のもとに届きます。
谷郷の小説は、悔しいくらいの美しい文章で完璧な小説でした。響子はこの小説を読み終えた後、今後何をするかを定めることができ、日常に戻る決心を固めます。
完璧な小説を読み終えた後って、興奮を超えてすっごく高揚感が高まるし、何かが見えてきます。
読書するとなんというか、響子の気持ちがわかるのですよ。だから読書って面白いのですよ。
最高に面白い小説、琴線に触れる小説、完璧な小説。そんな作品に出会いたいから読む。
夢中になって読んでしまうのです。作家の良心が見える小説、探してみようかな。
■最後に
こんな時代だからこその光る文章と読書の醍醐味が味わえます。
だから読書は面白い。新しい本に出会うことを恐れないで、といいたい。
作家の良心が詰まった作品です。
[…] 8.「ロゴスの市」、147.「二十五年後の読書」、148.「太陽は気を失う」 […]
[…] 8.『ロゴスの市』、147.『二十五年後の読書』、148.「太陽は気を失う」 […]