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【お仕事小説】47.『舟を編む』著:三浦しをん

投稿日:5月 17, 2017 更新日:

こんにちは、トーコです。

今日は三浦しをんの『舟を編む』です。

舟を編む (光文社文庫)

 

■あらすじ

馬締(まじめ)光也は出版社勤務で営業をしていたが、ひょんなことから辞書編集部へ異動になる。

そこでは「大渡海」という新しい辞書の完成に向け、日々様々な人が情熱をもって作業に当たっていた。

同じころ、馬締は香具矢という板前の女性と出会う。


■作品を読んで

この小説は随所に働く人間にとって「うんうん」とうなずきなるポイントがあります。

例えば、馬締と香具矢が初めてのデートで観覧車に乗った時のこと。

観覧車に乗るのは料理と同じことと香具矢がつぶやきます。

どんなにおいしい料理を作っても空腹はやってくる。それでも好きだから腕を振るう。

辞書作りも完成しても完成とは言い切れない。それでも思いを伝えたい人がいる限り。

お互いに辞書作りと料理に共通点を見出したことです。

仕事に終わりはありません。でもそうとわかっていてなぜ続けているのか。

好きだから、誰かに届けたいからなのでしょうね。

すごくなるほどと思ってしまいました。仕事に押しつぶされそうになって、負けそうなときちょっとがんばれそうな気がします。

同時に、観覧車って静かに持続するエネルギーを秘めた遊具なんだという結びの言葉がすごいです。

そういうものの見方があるんだなと大発見をした気分になりました。

 

やがて「大渡海」完成前に岸辺という女性が辞書編集部に異動になります。

いきなりの新しい部署っの配属でドキドキするし、うまくいくかわからない市、コミュニケーションをとるのも大変。

ふと岸辺が馬締が昔香具矢に送ったラブレターを読みます。

不安なのは私だけじゃない、馬締だって今もそうかもしれない。

不安だから必死にあがく。言葉で通じないこともある。だけど、その不器用な言葉を勇気をもって伝えるのです。相手が受け止めてくれるよう願って。

すごくわかります。不安で不安で仕方がなく、何か必死になるんですよね。

トーコの場合、わからなくて聞きたくて、でもうまく聞けない時の気持ちにすごく似てます。

上司とかに「わからない」って聞くのすごく勇気がいるし、なんだかうまく考えがまとまり切れなくて、焦って余計にわからなくなるという悪循環に陥りそうなときがあるんですよ。

それはトーコが不器用すぎるのかもしれませんが。

でもみんな不安なら一緒かもしれない。一緒に頑張れば、たくさんの言葉を正確に集めることができるかもしれない、と感じる岸辺さんでした。

 

■最後に

この作品を読むと、言葉のすごさを思い知ります。

言葉ってある時はすごく必要で、またもどかしいものに変わります。

不器用だからこそ思いの丈を伝えることができないこともあるかもしれない。

だけど少しずつ進み続ければいつか光が見えてくるものです。(本文より)

仕事も人生もきっと同じことです。

そう思い出させてくれる本です。

 

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