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【叫びの物語】225.『ⅰ(アイ)』著:西加奈子

投稿日:3月 29, 2020 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、西加奈子の『ⅰ(アイ)』です。

i (ポプラ文庫)

 

■あらすじ

高校生のワイルド曽田アイは、数学の時間に「この世界にアイは存在しません。」ということを聞かされ、衝撃を受けます。

それから、その事実は深く胸に残ります。

 

■作品を読んで

帯の触れ込みがすごいです。又吉と中村文則の解説がなかなかの絶賛っぷりなので。

でも、読み終わってからわかります。この2人の言葉嘘ではない。限りなく本当で透明です。

この作品は確かに一気に読めます。

トーコも横浜から家に帰るまでの本がなくなってしまったので、ちょうど本屋さんにあって気になっていたこの作品を買いました。

途中美術館に行ったのですが、美術館が激混みだったので待ち時間にずーっと読んでいたら家帰るころにはほぼ読み終わっていました。

 

さて、戻ります。

高校生になったアイは、数学の授業の「この世にアイは存在しません」という言葉を聞き、それからというものずーっとどこかでこの言葉が引っ掛かっていました。

とはいえ、アイという名前こそ日本人っぽいが、アイ自身はシリアからの養子で、小学生まではニューヨークで暮らしていました。

父親はアメリカ人、母親は日本人、自分は養子。

気にしなくてはいいのだが、自分は養子で不当な幸せをつかんでいることを気に病んでいました。

それゆえ、彼女は死者の数を数えていました。何か災害や事件が起こるたびにどれくらいの死者が発生したか。

一歩運命を違えば、自分が死んでいたのかもしれない。それを忘れないようにするため。

高校ではもう一つ大事な出会いがありました。ミナとの出会いです。

お互いにないものを持つ2人は、やがて長きにわたる友情を少しずつですが築いていきます。

アイが大学生になり、東日本大震災が発生しました。それがアイにとっても転機となりました。

ミナはアメリカに行きました。アメリカに行っても電話やメールがあるのでつながれます。

震災が発生したとき、ミナはアイの気持ちを察します。

アイは起こったことに心を痛めている。そしてその渦中にいようとしている。

ミナはアイがそれでいいと思うなら、それでいい、と言い放ちます。

アイはミナが肯定してくれたことで、変わり始めます。

まず、痩せ始めます。痩せ始めたら、手持ちの服が入らなくなったので、新しいサイズの服を買いに行きます。

それから、男子学生たちの目が変わっていき、新宿や渋谷、原宿に行けるようになります。

そんなときもう1つの大きな出会いがありました。ユウという年上の男性との出会いです。

ユウは写真家で、世界中でデモの写真を撮っていました。そう、アイとユウは原発反対のデモで出会いました。

恋に夢中になり学業に集中できなくなったアイ。でも、留学生のため日本にいられなくなる可能性もありました。

そんなタイミングでユウにプロポーズされ、結婚します。

同時に数学の教授から「アイがないって言う数学教師はばかだ」と言われます。

長年のもう1つの呪縛から解放された瞬間でした。

結婚し1年。妊娠の兆しがないため、アイは不妊治療を始めます。

そこまでして子供が欲しい理由は、血のつながりにこだわりがあるからです。

そりゃそうでしょう。養子で親と見た目が全然違うという場面を幾度となく体験しているからこその執着です。

アイは妊娠するも流産します。一方、ミナも望まぬ妊娠をします。

そんな時、アイはミナが産まないという選択をしたとき、なんでと喧嘩をします。

しかし、最後はアイがミナのもとに会いに行き、ミナがやっぱり子供を産むことを決め、仲たがいはなくなりました。

 

一気に物語の中身を書きました。ネタバレしてますわね、これ。

ただ、アイのように今起こっている出来事に対してここまで純粋に思いを馳せることができるというのは少ない気がします。共感できる、というのが逆にすごいと思うのです。

世の中では様々な出来事が日々目まぐるしく起こっています。

ただ、アイのように矛盾を感じながら生きる人は多い気がします。

どこか、この物語は他人事ではなく、自分ごとの部分もありますね。

 

■最後に

なかなか、複雑な想いを抱えながら生きる主人公が成長するにつれ、自分と向き合っていきます。

中でも、ミナとユウとの出会いは大きいです。

強さと優しさが静かにあります。混迷を深めている今だからこそ読んでほしい物語です。

 

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