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ことば コラム

【今の日本を見る】262.「日本の気配」著:武田砂鉄

投稿日:11月 5, 2020 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、武田砂鉄の「日本の気配」です。

日本の気配

 

■あらすじ

今や日本は空気ではなく、気配を読まないといけないのか。気配は読むことはできない、察知するものである。

これまでに様々な媒体でまとめてきたコラムを編みなおした1冊である。

 

■作品を読んで

著者である武田砂鉄さんは、トーコの中ではラジオでおなじみの人です。

Actionというラジオ番組が終わってもなぜか彼だけは金曜日の昼間から夜10時に移っただけで改変された唯一の人です。

Actionで残ったのって、あと1つは「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」というコーナーのみ。

でも、金曜日のオープニングトークはまさにこのコラムで書いているようなことを言ってたので、リアルタイムで聴ける日はすごく楽しみでした。

それが10時に移ってもオープニングトークがまさかの同じ調子だったので、ちょっとほっとしました。

こんなコラムを書くから常にとげとげしい人なのかな、と思われますが、ラジオの語り口調を聴くとそうでもないですよ。

さて、話を戻しましょう。このコラムが書かれたのは2015年から2017年のことです。

つまり、若干年月が経っています。が、しかしつい最近まで首相は同じ、新首相もわきにいた人ですから世の中全体が驚くほど変わる要素はゼロ。

なので、このコラムで書かれていることが3~5年経っても起こっています。悲しかな、むしろ悪化しています。

政治家の発言を聞いていてもツッコミどころの多い発言が増えたような気がします。

というか、軽い。そんなに中身なくて大丈夫か、と。実際はダメでしょうが。コラムの入口でこう書いています。

政治家の言葉の軽さを許すからこそ、政治は暴走する。違和感や憤怒を引きずるためには、政治家の言葉を執拗に引っぱり上げるべきだと考える。

今の菅政権で話題になっている「日本学術会議」ですが、みなさん飽きたといわずに執拗に引っ張り上げようする動きを応援した方がいいです。

おそらくですが、国民を馬鹿にしすぎです。国民は熱しやすく冷めやすいから、そのうち飽きるだろう。時が熟すれば葬り去ることができる、くらいにしか思ってないのでしょう。

それは、このコラムが書かれたころと変わりありません。むしろ悪化しています。繰り返すようでなんですが。

このコラムは、私たちが感じている言葉にできないモヤモヤを表したなかなか鋭い言葉が並んでいます。

政治の章の最後で、こう締めくくります。

貧相な言葉を放任する優しさが、先方の暴力を作り出している。徒労感はあるけれど、繰り返し指摘しなければ、ますますこの空気を、気配を、自由気ままに握られてしまう。

さっきの引用の言葉と意味はほぼ一緒です。

今の政治家の発言があまりにも国民を馬鹿にしているようにしか思えない状況は、おそらくですが、民衆の側にも少なからず問題はあるかと。

じゃあ、民衆側はどうすればいいのか。放っとかない。とにかく粘る。

なんというか、ほとぼりが冷めたら報道しない的な感じでマスコミもうまく誘導しているような気がするので、きちんと注目する必要がありますね。

ほかにも、消費税のCMに日本の誰よりも当時働いていた芦田愛菜に訴えさせるという謎の皮肉、監視社会を「鼻くそを自由にほじれない社会」というタイトルに昇華したり。

なかなかの言葉選びである。お見事。いずれにせよ読んでいくうちに、大丈夫かこの国は、と半ば本気で心配になってくる。

なんだか考えすぎないように仕向けられていて、考えないようにさせられてるんじゃないか、という恐れを感じます。

最後はコミュニケーション能力という言葉についてです。というか、のっけから「コミュニケーション能力」として問われすぎている、と評しています。

確かに就活の時に悩みました。コミュニケーション能力ってなんだ。何をもってしてある、ないを判断されなければならないんだ。

それも初めて会った人間になぜ判断されなければならないんだ、と。

どうやら著者も同様の考えのお持ちのようです。そもそも自分と誰かの「能力」で測られるものなのか、と。

これには共感しましたし、救われました。

コミュニケーションって、常に失敗しているのであって、そして、そこから飛躍しているのであって、失敗や飛躍を放置しておくほうが、対する個々の振る舞いに対して寛容でいられると思う。

仕事で相手とのやり取りにびくびくしていたせいもあるのですが、コミュニケーションは常に失敗しているもの、という言葉が刺さりました。

同時にあらゆる要素で失敗する瞬間があるので、誰も責めてはならない、と。

そう思えたら、きっとみんな寛容になれる気がする。ここまでギスギスしないのではないのかな。

 

■最後に

書かれた当時の日本を鋭い言葉で切り取っているコラムを集めた作品です。

何が困ったって、2020年11月現在書かれた当時より悪化している世の中になりました。

今の日本を覆うモヤモヤの原因がつかめそうです。

 

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