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【人の最期】474.『滅ぼす』著:ミシェル・ウェルベック

投稿日:9月 30, 2023 更新日:

こんばんは、トーコです。 

今日は、ミシェル・ウェルベックの『滅ぼす』です。

■あらすじ

時は2027年。大統領選挙の動きが活発化している中、経済大臣ブリュノの秘書官ポールの私生活はいろいろとあわただしくもありました。

「滅ぼす」のタイトルの意味がわかるとハッとする作品です。

 
 

■作品を読んで

なんというか、けっこう俗な小説を書いてきたなあと思いました。

テーマそのものは重量感があるのですが、多分他のミシェル・ウェルベック作品よりは個人的には読みやすいです。

しかもこれ、全国学校図書館協議会選定図書なんですね…。この選定図書というのは、学校図書館に適した図書として選ばれます。

日本の純文学に特有なのが性描写が多いことなのですが、この作品も意外なくらい多いです。

ミシェル・ウェルベックってそうだったっけか…と思ったので、性描写が苦手な方は読むのをおすすめしません。

まあ強いて言うなら、50代の1度は夫婦関係が見事に冷え切った夫婦も、なかなか情熱的にセックスする描写はある意味で衝撃的かもしれません。

日本人は歳を重ねてもそんなにセックスする人が多い文化ではないので、こうして楽しむ姿があるのはいいのかもしれませんね。

さらに、この作品は3人の翻訳家が共同で訳しています。それは、出版からなるべく早く日本の読者に届けたいという思いから3人で担当を分け、訳したものをそれぞれに回して、確認作業等を行ったそうです。

とてもじゃないですが3人で訳したとは思えないくらい訳が安定していたので、調整作業はきっと大変だったんだろうなあと思いました。

それでは、作品にいきましょう。

冒頭に謎の暗号メッセージが出現し、世間を騒がせています。

一体何が始まるんだか、と結構不安になる要素が多いですが、一気に物語の世界に引き込まれます。

暗号を中心に物語は展開されるのかと思いきや、ここで物語の主人公ポールが登場します。彼は、経済大臣ブリュノの秘書官を務めている超エリート。しかし、妻プリュダンスとは宗教感の違いから、いつの間にか夫婦関係は冷え切ってしまいました。

そんなある日、実家の父親が倒れてしまい、救急車で運ばれることになりました。

ポールにはすぐ下の妹セシル、10歳年下のオーレリアンがいます。さらに、芸術家として亡くなった母親と内縁の妻のマドレーヌがいます。

母親と再婚した妻の扱いにそこまで大きな差が表面上ないフランスがある意味ですごい、と文化的な差が見えてくる…

父親は一命をとりとめるものの、植物人間状態になりました。人生の最期にかなり良さそうな施設で過ごせる見込みが立ちました。

ちょうどそのころ、ポールと妻プリュダンスとの関係は冷え切っていました。原因は彼女の信仰している謎の宗教でした。

とはいえ、物語が進むと2人の関係は一気に改善していきますが…。

同時に、父親の入院で長らく連絡を取っていなかった兄弟たちとの仲を修復することになります。

妹のセシルは今でもきちんとカトリック教会で祈りをするなど、信仰を持っています。

トーコもかなり意外に思ったのですが、フランス人の大半も実は教会に行き、ミサに参拝するという習慣が失われつつあります。

なんでも、フランス人は無信仰を自認する国民ランキングで世界4位とのこと。ちなみに、1位は中国、2位は日本です。

なので、人間にとっての救いって何だろう?ということにいろいろとつながっていきます。

弟のオーレリアンも、売れないジャーナリストの妻と血のつながらない息子がいます。こちらも夫婦関係が冷え切っており、オーレリアンも離婚を考え始めます。

決定的な出来事は、父親の入院先のEVC-EPRという病院と介護施設が合体したような施設で父親の世話をするマリーズという女性と恋仲になります。

オーレリアンの仕事はタペストリーなどの文化財の修復ですが、その仕事をマリーズに見せたり、家族と違和感なく話したりととても親密であることがうかがえます。

しかし、父親の入院する病院の所長が変わり、患者数に対して職員数の割合が違うことに対して労働組合から反発があり、所長は是正しようとします。

そのため、父親の入院環境の悪化も否めません。その後、父親は無事に病院を脱出することができました。

が、オーレリアンの妻の記事が原因で、オーレリアンは自殺します。さらに、ポールも秘書官の仕事を休職します。

そんな中、ポールに顎のガンが見つかります。しかし、様々な治療法を試すも、回復せず、死に向かうことを医者から宣告されます。

最期の2ページを読んだ時に、「へっ」と思いました。なんと、三島由紀夫の『春と雪』なんかと思ったからです。

プリュダンスが輪廻転生を信じていた人で、カルマの法則から涅槃まで出てきて、正直にびっくりします。

フランス人がそんな概念を描ける人がいたんだ…(失礼)と思いました。

なんだか、すごく感動的な場面です。同時に、真理にたどり着いたなあ、と思いました。

 

■最後に

とても謙虚な小説です。なんだか、いろいろなものがそぎ落とされていきます。

人の死は何かを悟らせます。物事の真理はここにあるのかもしれませんね。

 

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