こんばんわ、店主です。
今日は、高畑勲『君が戦争を欲しないならば』です。
■あらすじ
この作品は、高畑さん自身あまり語りたくなかった戦争体験について、今後守らないとこういったことが起こるということを岡山県での講演会で話した内容が収録されています。
さて、どんな内容を話したのでしょうか…。
■作品を読んで
何が凄いって、この作品は岩波書店から発刊されている岩波ブックレットというとても薄い本として刊行されています。なので驚くほどあっという間に読めます。
ただここから述べていきますが、内容は驚くほど濃いです。
構成としては、
第1章 語ってこなかった戦争体験
第2章 民主主義教育一期生としての戦後体験
第3章 戦争を欲しないならば、何をなすべきか
の3部構成となっています。
まず、第一章。高畑さん9歳の空襲体験。
そもそもなぜ高畑さんがご自身の戦争体験を話さないでいたのかというと、それは自分よりもっと悲惨な体験をした方から見れば、自分の体験は大したことないから。
2025年現在、悲惨な太平洋戦争から80年の時が経ちました。おそらく、実体験としての戦争を語れる方はまもなくいなくなると思います。
その体験が、このブックレットに残っているだけでも価値のあることと思いますが。
しかも高畑勲監督は、既に鬼籍に入られている(この講演から数年後に亡くなっています)ので、とても貴重な内容です。
それにしても、この空襲体験はすごい話です。
空襲警報が鳴り、1つ年上のお姉さんと2人で空襲から逃げ惑うという壮絶な体験は、文面読んでいるだけでも恐ろしい話です。
1番すげえと思ったのは、爆弾が光る瞬間を見たお姉さんが失神し、さらにお尻に葉っぱくらいの大きさの破片が刺さったこと。高畑少年は、お姉さんの名前を呼んで起こしました。
周りは火の手が上がっている中で、お姉さんが倒れるとか9歳じゃなくても恐怖量が多すぎて参りそうです。それからすぐに逃げるのを再開したそう。
ちなみに、爆撃を受けた後は、上昇気流が発生し雨が降ります。いわゆる「黒い雨」です。これは広島や長崎だけの話ではありません。
中国の奥地で雨乞いのために爆竹を鳴らす儀式をしますが、原理はそれです。
しかも爆撃を受けた後なので、煤まみれ。雨は欲しいけど、とんでもない雨が降ってくるというもの。この話を聞くだけで、戦争なんぞ体験したくないわ、と本気で思います。
ただ後年監督の逃げたルートを見たら、1番まずい逃げ方をしていたことが判明しました。
とはいえ、10歳と9歳の少年少女たちにそんなことを考えている余裕はないことでしょう。
第2章は、戦後民主主義第一期生として見た世界。
8月15日を機に、教育が変わります。軍国主義から民主主義教育に変わります。
しかも、学校の先生たちもそんな教育は受けたことがない中での手探りのものでした。そういう意味での良さや体験できたことは経験として生かされていることでしょう。
第三章は、ほとんど核心の章になります。
結論を言うと、「だから平和が大事」とかいう結論ではないのです。
講演中に監督はこう言います。
戦争が仮に始まってしまった場合、「始めた以上は勝たなくては話にならんだろう」といって、政府の戦争に協力するようになります。たとえ戦争や政治の方向性が間違っていようが関係ありません。
なんなら、ナチスは選挙で選ばれています。世の中の「空気」に同調するということは、日本人は得意です。
笑いたくなりますが、日本はそう言った歴史を積み重ねてきました。
さらにいうと、戦争責任は、為政者はみずから取ったのでしょうか、と問いかけます。
他者(GHQ)が裁いた東京裁判だけです。
日本のお偉いさんが責任を取らない体質なのは、武田砂鉄さんの書籍で色々とわかりますし、第二次世界大戦当時の軍事戦略から見ても同じ失敗して、いつ学ぶんだろうかこいつら‥がわかる『失敗の本質』でもわかります。
189.「失敗の本質」著:戸部良一他編集、262.「日本の気配」著:武田砂鉄、324.『偉い人ほどすぐ逃げる』著:武田砂鉄、451.『べつに怒ってない』著:武田砂鉄
(『別に怒っていない』はちょっと違うかもしれませんが、参考までに過去の記事です。)
思い起こせば、結構簡単に言われてみればそうだわ、というエピソードが思い浮かびます。
だから歯止めが必要になる。その歯止めは、憲法9条と言います。9条は、戦争をしないこと。
店主は守り切りたいなと思うのでしょうが、皆さんはどう思うのでしょうか。
戦争で生き延びた話が、美談で終わらずに、政治の話と切っても切り離せないと言いましたが、なんとなく戦争体験の話を聞いて「今が平和でよかった」だけで終わらないから、心のモヤモヤが消えたなと思うのでした。
■最後に
この内容は、誰もが読んでほしい内容だなと思いました。そこから何を考えるのかは自由ですが。
戦争と平和についていろいろと考えさせられる本だなと思いました。