こんばんわ、トーコです。
今日は、ジャン=ポール=ディディエローランの『6時27分の電車に乗って、僕は本を読む』です。
6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む (ハーパーBOOKS)
■あらすじ
パリ郊外の裁断工場で働くギランは、日々本を裁断する仕事に矛盾を感じながらも、その日に生き残ったページを持ち帰って、翌朝の電車で朗読するのが日課であった。
そんなある日、いつもの通勤列車の中で、誰のかわからない日記を拾う。
■作品を読んで
このあらすじを読むだけでは、このギレンという主人公はただの怪しい人だという印象です。
日本だったら間違いなく警察送りにされてしまいそうな気がします。東京ではやらないでください。
ただ、この物語の中では、ギレンが生き残ったページを読むことで、多くの人が新鮮な空気を味わうことができていました。害のない変わり者に対して向けられる敬意とともに。
やっぱり、東京ではそれはないわな、トーコだったらひきますもの。
朝の電車は相当憂鬱だと思います。トーコは満員電車が嫌で会社の近くに住んでいるので。
同じような毎日に、同じような日常に、多くの人はきっと鬱憤がたまっていたり、退屈していることでしょう。
朝の電車でページを読むという作業はギレンにとっては生きる活力のようなものです。
そんなある日、ギレンはいつもの電車でUSBメモリーを拾います。
家に帰ってUSBメモリーを開くと、中から女性と思しき人が書いた日記が入っていました。
日記を読むと、どうやら彼女はジュリーという名前で、ショッピングセンターのトイレ清掃係をしていることがわかりました。
ジュリーのことが気になってきたギレンは、裁断工場で脚を失い、現在失った脚を取り戻すことに費やしている友人ジュゼッペに相談します。
ジュゼッペの行動には脱帽します。ギレンからジュリーの日記をもらった後、彼は日記からつぃかえそうな情報をもとに、トイレ清掃係のいるショッピングセンターの情報を抽出しました。
該当するショッピングセンターは8か所だ、というところまで調べていました。
あとは、ギレンがジュリーを探し出すだけ。
やがて、あるショッピングセンターにいることが分かったギレンは、ジュリーに手紙を送ります。
ことの経緯を説明し、あなたのことが好きになりました、どうか時間をください、と。
ジュリーは手紙をもらった時に、なんて頭のイカれた男なんだろう、と思っていました。
でも、手紙から伝わってくる想いから、ジュリーのことが好きになったこと、ジュリーもギレンのことが気になっていました。
物語の最後で、ジュリーはきっと手紙に書いてあったギレンの電話番号にかけるんだな、ということを暗示させて幕を閉じます。
パリが舞台なので、さぞかしおしゃれな感じがするのかと思いきや、名前がフランス人名だけで、ちょっと近くにこんな物語がありそうな雰囲気があります。
訳者曰く、実際に舞台になっているパリ郊外は、本当に実在し、本当に田舎らしいです。
しかも、2人の職業は全く明るい仕事ではなく、社会から忘れたところにある仕事でもあります。
でも、2人の背景にあるそんなに明るくない事実も、2人をつないでいく過程ですごく前向きで、何かある予感がしてきます。
読後は、すごく心が温かくなります。
■最後に
パリを舞台に、社会の片隅にいる男女が出会っていく作品です。
最初はギレンという男はかなり危ない人物かと思いきや、朝の朗読を通して様々な人々と出会って少しずつ何かが変わっていきます。
ふとすぐ近くで展開されているのでは、と思わせてしまうくらいの身近さと、2人の距離がどんどん近づいていく過程がとても温かいです。