ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

古典 外国小説 小説

【少年の頃の追憶】139.『遠い声 遠い部屋』著:トルーマン・カポーティ

投稿日:1月 1, 2019 更新日:

こんばんは、トーコです。

今日は、トルーマン・カポーティの『遠い声 遠い部屋』です。

遠い声 遠い部屋 (新潮文庫)

 

■あらすじ

ジョエルは父親に会いに行くために、アメリカ南部の小さな町にやってくる。

そこには父親をはじめ、様々な人たちが住んでいた…

 

■作品を読んで

正直に言いますと、なかなかにつかみどころのない作品です。まあ、アメリカ文学ってそんな作品が多い気がするというのは、トーコのよくわからない偏見でもありますが。

主人公のジョエルは13歳です。彼は母親を亡くし、叔母家族と一緒に住んでいました。

ある日、会ったことのない父親から一緒に書かないかと連絡が来ました。

ジョエルは、まだ見ぬ父親に会いにランディングという街に行きます。

そこにいたのは、病気で身動きのできない父親、華やかな時代に浸るエイミイ、重い過去を抱えるランドルフとなかなかの時の囚人たちばかり。

ジョエルは近所のおてんば娘アイダベルと一緒にランディングから逃げ出そうとするも、ジョエルは逃げ出した先で雷雨に打たれ高熱にかかります。

目が覚めて気が付きます。少年の姿を置き忘れて、大人の世界に足を踏み入れたことに。

たどり着いて物語は幕を閉じます。あー、不思議だ。何といえばいいかわからない。

ただ、ランディングから逃げ出したときに出会ったミス・ウィースティリアという美しい人ですが、ものすごく背の小さい女性に出会い、彼女の言葉で何かが変わったことです。

「今は小さい男の子たちでも、いずれは大きく成長しなけりゃならないでしょ、あたしそれを考えて、ときどき泣くことがあるの」

この言葉がこの作品のすべてを物語っています。成長することを悲しむのは永遠に小さいウィースティリアだけではないのです。

普通の男の子も女の子も成長します。いつか必ずその事実に気が付き、受け入れるのです。

ジョエルは熱を出してうなされてからやっと気が付きました。

受けいることができて、少年の姿を置き忘れることができたのだと思います。

この作品が評価されているのは、少年の繊細な心と感情を発表当時のアメリカにはない文体で見事に描いたことです。

アメリカの文体といえば、ハードボイルド小説に見る乾いた文体と呼ばれる文体です。

代表的なところでいえば、ヘミングウェイでしょうか。あれはあれでいいんですけど。

また、父親探しというテーマは、著者の幼少期に両親の離婚経験を投影しています。

見えないものに怯えるジョエルも、子どもの顔をうまく使ったり、どこかで反発したくなったりと様々な感情の動きが見えてきます。

それが13歳という大人の世界が近づくも、まだ少年の心でいたいしと惑うジョエルの心を表しています。

で、文庫版の表紙の後ろのあらすじが、文学史的な評価が8割というまさかの解説です。

もはやあらすじではないです。こんなある意味面白い本初めてです。

訳者のあとがきにもありますが、晩年のカポーティは少年に戻るために酒や麻薬の力を借りたと評していますが、なんとなく説明がつくなあと思います。

割とジョエル君、そんなに問題児すぎるわけでもない、なんか文学に出てくるちょうどいい塩梅の少年だもの。

余談ですが、カポーティの幻のデビュー作と呼ばれている作品もありますので、よかったらどうぞ。

3.『真夏の航海』著:トルーマン・カポーティ

すごく作品の毛並みが違いますよ、これ。

 

■最後に

少年と大人の間を揺れ動く13歳の少年を見事に描いています。

カポーティの初期の作品で文学史的にものすごい衝撃をもたらした作品でもあります。

いつかは必ず成長する。その事実を受け入れ、脱ぎ去っていく姿が印象に残る作品です。

 

-古典, 外国小説, 小説,

執筆者:


  1. […] 以後に139.「遠い声 遠い部屋」という本にも若干書いていますが、カポーティの出現は当時のアメリカ文学の世界を一気に変えてしまったという破壊力がありました。 […]

comment

関連記事

【圧巻の登場人物】254.『去年の雪』著:江國香織

こんばんわ、トーコです。 今日は、江國香織の『去年の雪』です。 去年の雪   ■あらすじ まず、驚きます。登場人物の多さに。一体何人出てきたんだろう…? しかも、老若男女問わず、さらには時空 …

【所得倍増をめぐる戦い】455.『危機の宰相』著:沢木耕太郎

こんばんは、トーコです。 今日は、沢木耕太郎の『危機の宰相』です。   ■あらすじ 1960年、池田勇人は首相になりました。その際に、次の時代のテーマを「所得倍増」としました。 この実現のた …

【温かいものが食べたくなる】187.『皿の中に、イタリア』著:内田洋子

こんばんわ、トーコです。 今日は、内田洋子の『皿の中に、イタリア』です。 皿の中に、イタリア (講談社文庫)   ■あらすじ 著者があるとき、カラブリアという街を書くために映画から書物やらい …

【愛のカタチ】377.『1ポンドの悲しみ』著:石田衣良

こんばんわ、トーコです。 今日は、石田衣良の『1ポンドの悲しみ』です。 ■あらすじ ここには、10作の恋愛小説が詰まっています。それぞれの愛のカタチ、時には裏切り等々あることでしょう。 さて、いい話を …

【旅に行く】421.『飛び立つ季節』著:沢木耕太郎

こんばんわ、トーコです。 今日は、沢木耕太郎の『飛び立つ季節』です。   ■あらすじ この2,3年、私たちは多くの制約がありました。ですが、16歳の時の旅の面影を探したり、壇一雄の墓を訪ねた …