ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

ビジネス書 実用書

【古典に向き合う】133.「希望の資本論」著:池上彰×佐藤優

投稿日:12月 8, 2018 更新日:

こんにちは、トーコです。

今日は、池上彰と佐藤優の共著である、「希望の資本論」です。

希望の資本論 (朝日文庫)

 

■あらすじ

この本が出版された2015年当時、トマ・ピケティという人が「21世紀の資本」という本を出しました。そこに書かれていることは、現代の格差問題について統計を用いながら解説するものでした。

トマ・ピケティの「21世紀の資本」は、マルクスの「資本論」の理論を証明した本でもありました。

この本は再び脚光を浴びたマルクスの「資本論」について、著者の対談形式の解説となっています。

 

■作品を読んで

「資本論」はかつて「革命の書」ともてはやされ、社会主義や日本でいえば1960年代後半の学生運動に影響を与えたそうです。

かつては、アカデミックな世界でもマルクス経済学はもてはやされていましたが、今はそう多くはありません。

ソ連の崩壊後、社会主義は資本主義に敗北したと思われ、影を潜めていました。

そこからのトマ・ピケティの「21世紀の資本」の登場です。詳しい内容は省略しますが、トマ・ピケティはマルクスの「資本論」の理論を現代のデータをもとに証明しました。

ただし、トマ・ピケティ自身はマルクスの「資本論」を読んだことはなく、影響は全く受けていないそうです。

こっちの方が個人的にはびっくりですけどね。

この作品は、こんな時代に資本論を改めて読んでみることに対する意義を説くことを中心としています。

トーコが一番面白いなと思ったのは、資本論において労働者の賃金は、労働力の再生産の費用になり、現代の世の中は再生産費自体が下がっているのではないかということです。

賃金の中には労働力の再生産の費用という、仕事をする上で必要なスキルを学ぶための費用も含まれています。あと2つ賃金の機能が書かれていますが、それは確かめをお願いします。

再生産費が下がっているというのはどういうことか。食べるものも牛丼やファーストフードなど、服はユニクロ、GUなど、簡単に言うと生活をするうえでこれらを選択すれば安く生活できる世の中になりました。

安く生活できるというのはありがたいことです。でもそれでいいのでしょうか。

では、今自分の会社の業績がかなりいいですが、給料が全く上がりません。どんな答えが導けるでしょうか。

資本論的に考えれば、ユニクロや吉野家を選べば、極端ですが社会的な生活費を抑えることが可能になり、下手をすれば非正規労働者と同じでもいいんじゃんと思われて、給料を上げないのことも想定できます。

それって、とんでもない話ですけど。実際にはそんなことも起こりえるのです。おお怖。

他にも、ソ連のエリート養成学校ではきちんと資本主義を学ぶクラスがあり、きちんと資本主義を知る人材がいたから経済システムを切り替えることができたりと様々な話があります。

こんな時代だからこそ、マルクスの資本論を読んでみたくなります。ただ、マルクスの資本論って3巻あるんですよね…。

冬休みの読書におススメです。年越しで読んでみるか…。

 

■最後に

なかなかとっつきにくいですが、マルクスの資本論を学ぶのは決して無駄ではありません。

世の中を見るのにも、自分の周囲を見るためにも、必要なことです。

この本は読んでみようというきっかけをくれる本です。

 

 

-ビジネス書, 実用書

執筆者:


comment

関連記事

【ちょっと考える】345.『「自分らしさ」はいらない』著:松浦弥太郎

こんばんわ、トーコです。 今日は、松浦弥太郎の『「じぶんらしさ」はいらない』です。 「自分らし@」はいらない くらしと仕事、成功のレッスン (集英社文庫)   ■あらすじ 突然ですが、皆さん …

【命の尊さ】140.『いのちの食べかた』著:森達也

こんばんは、トーコです。 今日は、森達也の『いのちの食べかた』です。 いのちの食べかた (角川文庫)   ■あらすじ 今日の晩ごはんのお肉は一体どこからやってきたのでしょうか。魚はどこからや …

【世の中を戦う武器】152.「頭に来てもアホとは戦うな!」著:田村耕太郎

こんばんは、トーコです。 今日は、田村耕太郎の「頭に来てもアホとは戦うな!」です。 頭に来てもアホとは戦うな! 人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法   ■あらすじ と …

【巨人の最後の書】472.『自然知能』著:外山滋比古

こんばんは、トーコです。 今日は、外山滋比古の『自然知能』です。   ■あらすじ 人工知能という言葉が出てくる前から、自然知能はあったのに、言葉としては人工知能が登場してから、自然知能に向か …

【考え方を知る】76.『思考のレッスン』著:丸谷才一

こんにちは、トーコです。 今日は丸谷才一の『思考のレッスン』です。 思考のレッスン (文春文庫)   ■あらすじ 著者は文学作品こそとても少ないですが、作家だけでなく、評論家や翻訳家としても …