こんばんは、トーコです。
今日は、ジャック・アタリの「パンデミック後、新しい世界が始まる」です。
■あらすじ
著者は、この作品をロックダウン中のパリで執筆したそうです。しかも、あらゆる情報やエビデンスを集めながらの執筆です。
コロナ以前に戻ることはもうないこの世界で、死から目を向けることなく、これからを生きるために。
これからの社会はどこへ向かうのか、欧州の知の巨人が語ります。
■作品を読んで
この著者の作品は以前にも紹介したことがあります。参考までに。135.「海の歴史」。読んで字のごとく海の歴史をつづった作品です。
よくぞまあ、こんな早い時期にパンデミック後の世界についての本を書いたなあ、と。
まずは、古の時代からの感染症の歴史を紐解きます。
感染症自体はそもそも今に始まったことではなく、大昔からあること。特にペストの時は相当な人が亡くなり、ヨーロッパ全体の人口が消えています。
最初からこう述べます。
指導者が間違った戦略を選択したり、他者や自分たちの死に意味を付与できなくなったりすると、パンデミックはすでに進行中の変化を加速させ、それまで存在しなかったイデオロギーや合法権力を生み出し、新たな指導者の登場を促し、地政学を一変させる。
なんというか、実際にアメリカでこれに近いことが起こった気がします。コロナを軽んじたトランプ大統領は、大統領選の追い込みをかけないといけない時期にコロナに感染し、そこで一気に潮目が変わったように思います。
そもそも、コロナ前から社会の分断や自分第一主義など、なんだかなあ、という政策が続いていました。
日本にいるトーコからするとすごくうらやましいことにその通りのことが起こりました。日本なんてなんで亡国させるようなことを平然とするんだか…、ということばかりなので。
また、勘違いするな的な言葉も記述されています。
感染症の流行に直面しながら、早い段階で戦いに勝利したと考えるのは幻想である。そして、疫病対策への財政出動を早々に打ち切るのは拙速である。幻想と拙速はいずれも、われわれを惨憺たる結果に導く。
これ、怖いぐらい当たっています。第一波を抑え、WHOから優良児扱いされたけど、欧米より早く第2波が来るし、GoToキャンペーンなるわけわからんことしてたら第3波到来している我が国の状況とそっくり。
疫病対策への財政出動もなんかずれてるし、本当にこの国は亡国するのではないかと最近心配しています。
なんというか、この人本当に鋭い…。
第2章で今回のパンデミックについて述べています。なんというか、中国批判が凄い。トランプさんもこれを根拠にしたのでは、とツッコミたくなるレベルです。
第3章では、世界経済について述べています。3月から4月に世界中でロックダウンしました。
それにより感染症は抑えられましたが、世界経済はほぼ一時停止しました。なんてったって、最大で世界の半分の国がロックダウンしたのですから。
1番最初に工場の操業停止は勿論中国です。
余談ですが、2月下旬に電球を買いに行った電気屋さんからは「4月以降ニンテンドースイッチは入ってこないですよ。あと新生活用の家電も。次の入荷がいつになるかわからないから壊れそうな家電の在庫は見た方がいいですよ。」と言われ、ギョッとした記憶があります。
思い起こせば、トーコ的に新型コロナで影響を受ける出来事その1だったようにも思います。
しかも、4月にちょうどあつまれどうぶつの森が流行った時期にスイッチが買えないことが報道されていましたが、家電量販店の人はずいぶん前から知っていたのです。
また、その一方で社会が目をそらし続けた問題に向き合うことにもなりました。貧困、女性差別、気候変動。
なぜか、日本でもカーボンフリーということで、2030年代にガソリン車の廃止をうたっています。それは今かよ、とツッコミたいですが。
飛んで第5章では、この状況から得たよいものを引き出すものとなっています。
強制的にテレワークが普及しました。とはいえ、弊害もあります。その改善方法も述べています。
第6章では命の経済について述べます。ここで、著者は命の経済を、パンデミックに勝つための部門とパンデミックによって必要性が明らかになった部門としています。
まず、医療の分野。もう負担は増えるしかない、と覚悟を決めるしかないです。それは決して悪いことではない、と認識する必要もあります。
まあ、日本の場合は、医療費制度についてはほかにも問題もありますけど。
命の経済が関連する分野は、主に女性が担っています。また、家にみんなでそろえばたいていの家庭は女性が家事を担うので女性の負担が増えています。なんだか、ジェンダーギャップ問題も再燃した気がします。
これを機に議論をしっかりしてほしいですけどね。なんてったって、日本のジェンダーギャップ指数はインドレベルです、先進国ではないので。
同時に、観光業の業態変換についても述べます。個人的には、高級ホテルを高齢者住宅や医療施設に変換するのが面白いなあと思いました。
第7章は、パンデミック後の世界についてです。もう元に戻ることのない世界で、意外と参考になるのはSF小説だったりします。
注目すべきは、気候変動から蚊の生息地が変わり、新たなパンデミックが引き起こされる恐れがあることです。
蚊を媒介にした病気にデング熱やジカ熱があります。ほかにもありますけど。蚊の生息地が大きく変わればそれまで蚊を媒介した病気が流行らなかった地域で大流行する恐れがあります。
あと10年から20年後には起こる可能性はゼロではないでしょう。
最後に「闘う民主主義」をテーマに本書を終えます。
おそらくですが、安全面を強化することは極論独裁政治への道に進む可能性を否定することができません。
そのためにはどうすればいいのか。まずは、5原則を挙げ、フランスに必要な政策を述べています。
まあ、大方は日本にも当てはまります。日本はカーボンフリーが1番進んだ気がします。喫緊の課題はそこじゃない気がするが。
今の現状とともに将来世代の利益を考慮しながら、この危機を乗り切るのが1番いいのですが。現実は難しいようです。
■最後に
著者は過去の著作でパンデミックがいつか起こることを予測していました。そして、皮肉にも当たりました。
もう元に戻ることのない世界で、これまでの歴史を理解し、今後を考えていく必要があります。
[…] 268.「パンデミック後、新しい世界が始まる」著:ジャック・アタリ […]