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エッセイ ことば 対談集

【ある対話】305.『みっちんの声』著:石牟礼道子 池澤夏樹

投稿日:5月 30, 2021 更新日:

、こんばんわ、トーコです。

今日は、石牟礼道子と池澤夏樹の『みっちんの声』です。

みっちんの声

 

■あらすじ

2008年から石牟礼のなくなる2017年までの2人の対話が綴られています。

10年来の交友の軌跡が描かれています。

 

■作品を読んで

石牟礼作品は、これまでに幾度となく紹介してきました。

201.「椿の海の記」270.「なみだふるはな」300.「魂の秘境から」

で、池澤夏樹作品もあります。親子対談ですけど。292.「ぜんぶ本の話」

この作品は、あらすじでも紹介した通り2008年から石牟礼がなくなる寸前までの対話が綴られています。

2008年の最初の対談で、池澤さんは石牟礼さんにこういいます。石牟礼さんが「マスコミQ」という番組に出たときの話です。

石牟礼さんを連れてきて坐らせて、カメラを置いて、あとは待っている。それがいちばん本当の言葉を引き出すための手段だと思ってやっている。だから、その三十分は、水俣のことについて苦悶しながらしゃべる石牟礼さんの言葉が一個一個重くて、本当に感心しました。それテレビってこういうこともできるんだと思った。

すごく雑なテレビ番組に出ることになった石牟礼さんが必死に紡ぎ出す言葉。当事者だからこそ語ることのできる、中身があり、重みのある言葉。

カメラを置いて、待つだけという極めて雑なやり方では、きっとテレビ番組としては賛否両輪だったと思います。

それにしても、そんなテレビ番組が成立していた時代があったんだな、というのが1番の驚きです。

まあ、今じゃダメでしょうね。ある種のやらせの温床になってしまう。

それにしても、石牟礼作品を読むと水俣病について知らないことが多いので、驚かされることが多いです。

例えば、水俣病で金銭の賠償で救済します、なので買った魚の領収書を出せ、という話。

当時の水俣の魚の売られ方は魚屋で購入していたわけではないのです。魚屋さんが天秤棒を担いでおもりで量って売っていたのです。当然ですが、領収書なんてものはないことが推測できます。

しかも、何十年前の日常の買い物の領収書なんてほとんどの方がとっておくはずがないものです。いかにも霞が関の官僚が患者の数を増やさないようにするための対策としか言いようがありません。

実際に、水俣病救済特別措置法にはお金を二百十万円あげることで「救済した」という言葉を法文に含めているそうです。

いやー、これはいくら何でも酷すぎるでしょ。お金も少なすぎるけど、当事者の長年の苦しみをこれではい解決、って腹立ちますよ、これは。

トーコの話ですが、車の追突事故で結構軽度の被害を受けたことがありますけど、保険会社の対応が腹立つし、お金が少なかったので、弁護士を立てました。こっちは瞬間的にでも苦労したんだぞ、コルぁ。

それに対しても、お金は安いし、それで救済しましたよえっへん、じゃ被害者は浮かばれませんわ…。

そして、この件に対する2人の言葉もすごいです。

池澤:沖縄の基地も同じですよ。お金なら出てくる。どうせ自分のお金じゃないんですから。税金なんですから、配っているだけでしょう。こ  れだけ渡すからおとなしくしていなさい、と。それが国なんですかね。

石牟礼:それで、日本人の道義の下落を証明するような、一つの国の法律がその手本みたいに道義がまるでない、抜け落ちた条文を、よくも恥ずかしげもなく、これが水俣病救済の法律でございます、って。

この対話は2012年のことで、少し読み進めると沖縄も原発に入れ替えることが可能なことを揶揄しています。

この2人がもし今の状況を見ていたらどう思うのでしょう。コロナ渦で収入が減った人に対してそもそも何も配ってもいないし、自分の金という意識でもできたのでしょうか。

そして、この10年でさらに日本人の道義が劣化しまくっていることが如実に露呈されている出来事ばかりで、いやになる人が多いかと思います。かくゆうトーコもその1人ですが。

とはいえ、今更な話の部分でもありますがね。今更予見してもねえ。

あとは、石牟礼さんが詩を書いていたことでしょうか。ほかの著作の中でも触れられていたのかもしれませんが、ちょっと初耳感があって驚きました。

とはいえ、詩というよりは演劇っぽいようですが。イメージはなんとなく「椿の海の記」に似ているのでしょうね、きっと。

詩の作り方は池澤夏樹の母原條あき子はこう話していたようです。

いいところはパッとできる。そうでないところを少しは悪くないようにするのが大変なの

実は、石牟礼さんの詩の作り方も同じようで、最初のいいところ以外はあとは蛇足、と言っています。いろいろと考えさせられる一文です。

あとは、石牟礼さんが日本共産党に入党していたり、サークル村に入ったり。

しかも、日本共産党では赤旗や党員を何人増やしたとかの目標を達成させなければならない。えっと、石牟礼さんって担ぎ屋さんで魚をお米に変えることができず、見かねた他の人にやってもらったレベルの人ですよ。そんなことできなかったと本人も言っています。

除名されるまで結構大変だったようです。本人曰く8キロは瘦せたらしいです。うわー、除名ストレスダイエット…。

みなで一緒にやるとおかしな人が出てくる、と言ってましたが、本当にその通りでどこの組織でも出てきます。

大宅壮一ノンフィクション賞を辞退した時の話もあります。この時は熊本日日新聞文学賞も辞退しています。なんでかと聞いたらこう答えました。

賞なんか貰ったら、これは患者さんのためというよりも、自分の文体の世界をつくりたかったのであんなふうにして書いた、と思われる。でも「聞き書きではありません」と言うわけにもいかないので、黙って辞退しました。

これを聞いた池澤さんは、「選考する側が読みまちがいをしていたわけですね」と返します。

読んでいるこっちもなるほどな、と思います。変に尾ひれがついても困るから、黙って辞退したんだな、と。

「苦海浄土」は池澤夏樹が選ぶ世界文学全集の中に含まれています。それは、ドキュメンタリー要素だけではなく、幸せな暮らしがあったという文学的な想像力があることをいち早く見抜いたからです。

池澤さん曰く、敬遠したりしている人に向けて「苦海浄土」を読むように促したかったのだそう。なるほどね。

トーコもこうして選ばれることで「苦海浄土」を読みたくなった一人でもありますがね。

 

■最後に

なかなか濃い対談となっています。石牟礼さんがもうこの世にいないので、こうして声が残っているのが本当にありがたいし、本当に幸運なことです。

死者の声はこうやって受け継がれていくといいな、と思うのでした。

 

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