ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

エッセイ 文庫本

【鋭さと優しさがあふれるエッセイ】49.『無名仮名人名簿』著:向田邦子

投稿日:5月 21, 2017 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、向田邦子の『無名仮名人名簿』です。

新装版 無名仮名人名簿 (文春文庫)


■あらすじ

この作品は、著者の何気ない日常、様々な人、仕事の出来事などを優しいながらも、鋭く観察された文章でつづられています。

1つ1つのエッセイは3~6ページほどの短いエッセイで構成されています。

■作品を読んで

向田さんの文章はすごいなと思います。優しいんですが、鋭く、時には何かの本質をついています。

例えば、「特別」というエッセイから。

自分だけ特別扱いしてもらうのが好きな人って案外多いそうです。

けっこう人に特別メニューを出してもらったり、トイレは別な場所を使うとかそういうことを自慢する。

だけど、そのお店で事情の知らない人が接客した場合(新人さんとかが)に特別扱いしてもらえない。

新人さんは事情を知らないので平等に扱ったわけで恥をかかせたわけでもないのに、そういう人は自慢した手前撤回することができず、「あの店も落ちたねー」と言ってしばらく行かなくなったりする。

だけど、特別扱いしてくれるところにしか行かない。小さい店が多い。デパートは行かない。

でも電車に乗るときはそうも言ってられないので、面白くない顔して乗っている。

こうやって見栄っ張りのわがままおじさんを書いてしまうのか、と思ってしまいます。

人って欠陥がある方が面白いのでしょう。

また、著者自身も独身の働く女性でした。

この作品の中で小料理屋に入って1人で食べているときの自分を鼓舞するセリフが好きです。

「女ひとり、誰の助けも借りずにやっているんだから、たまにはこのくらいのことをしたって、罰は当たらないんだ」(孔雀より)

著者が生きていた1970年代はおそらくというか間違いなく、女1人で小料理屋でご飯を食べるのは大冒険だったはず。

著者は脚本家として生計を立てていましたが、脚本の仕事もかなりの枚数の原稿用紙を書き上げます。

今以上に女性が働くということは相当大変だったはずです。ご褒美の1つほしかったのだと思います。

また、トーコ自身も働く女子(おなごと呼んでください)です。

このセリフはうんうんと共感してしまいました。

食べても、買っても罰は当たらない。当たったらまた頑張るしかない。

なんだか現代の女性にも当てはまることをだいぶ昔からおっしゃっていた方がいたんですね。

■最後に

この作品にはほかにも鋭い観察眼で描かれたエッセイがたくさんあります。

それでいて優しくもあり、人間の本質を描いているのですが…。

また文章もすごくわかりやすく、静かな言葉で書かれていて、とてもすっと入りやすいです。

また女性の方に多いかもしれませんが、向田邦子という人そのものに共感する方もいらっしゃるかと思います。

人間を見ることができますよ。

 

-エッセイ, 文庫本,

執筆者:


comment

関連記事

【風景の記憶】300.『魂の秘境から』著:石牟礼道子

こんばんわ、トーコです。 ついに(やっと)ですが、300記事に到達しました。長かったです。これからもよろしくお願いします。 今日は、石牟礼道子の『魂の秘境から』です。 魂の秘境から   ■あ …

【私とは】365.『土の中の子供』著:中村文則

こんばんわ、トーコです。 今日は、中村文則の『土の中の子供』です。   ■あらすじ 27歳の私はタクシードライバーとして生きているが、幼い頃に親に捨てられ、孤児として虐待されてきました。これ …

【何とも言えない日常】199.「どこから行っても遠い町」著:川上弘美

こんばんわ、トーコです。 今日は、川上弘美の「どこから行っても遠い町」です。 どこから行っても遠い町 (新潮文庫)   ■あらすじ 都心から私鉄でも地下鉄でも20分ほどの小さな商店街を舞台に …

【女の生き様】7. 『裸の華』 著:桜木紫乃

こんにちは、トーコです。 今日は桜木紫乃の『裸の華』です。 裸の華   ■あらすじ 怪我でストリッパーを引退したノリカは、故郷の札幌に戻ってダンスシアターを開店する。 ダンサーを募集すると、 …

【現代最大の難問】322.『実力も運のうち 能力主義は正義か』著:マイケル・サンデル

こんばんわ、トーコです。 今日は、マイケル・サンデルの『実力も運のうち 能力主義は正義か』です。 実力も運のうち 能力主義は正義か?   ■あらすじ ハーバード大学の白熱教室でもおなじみのサ …