こんばんわ、トーコです。
■あらすじ
この作品は、著者の何気ない日常、様々な人、仕事の出来事などを優しいながらも、鋭く観察された文章でつづられています。
1つ1つのエッセイは3~6ページほどの短いエッセイで構成されています。
■作品を読んで
向田さんの文章はすごいなと思います。優しいんですが、鋭く、時には何かの本質をついています。
例えば、「特別」というエッセイから。
自分だけ特別扱いしてもらうのが好きな人って案外多いそうです。
けっこう人に特別メニューを出してもらったり、トイレは別な場所を使うとかそういうことを自慢する。
だけど、そのお店で事情の知らない人が接客した場合(新人さんとかが)に特別扱いしてもらえない。
新人さんは事情を知らないので平等に扱ったわけで恥をかかせたわけでもないのに、そういう人は自慢した手前撤回することができず、「あの店も落ちたねー」と言ってしばらく行かなくなったりする。
だけど、特別扱いしてくれるところにしか行かない。小さい店が多い。デパートは行かない。
でも電車に乗るときはそうも言ってられないので、面白くない顔して乗っている。
こうやって見栄っ張りのわがままおじさんを書いてしまうのか、と思ってしまいます。
人って欠陥がある方が面白いのでしょう。
また、著者自身も独身の働く女性でした。
この作品の中で小料理屋に入って1人で食べているときの自分を鼓舞するセリフが好きです。
「女ひとり、誰の助けも借りずにやっているんだから、たまにはこのくらいのことをしたって、罰は当たらないんだ」(孔雀より)
著者が生きていた1970年代はおそらくというか間違いなく、女1人で小料理屋でご飯を食べるのは大冒険だったはず。
著者は脚本家として生計を立てていましたが、脚本の仕事もかなりの枚数の原稿用紙を書き上げます。
今以上に女性が働くということは相当大変だったはずです。ご褒美の1つほしかったのだと思います。
また、トーコ自身も働く女子(おなごと呼んでください)です。
このセリフはうんうんと共感してしまいました。
食べても、買っても罰は当たらない。当たったらまた頑張るしかない。
なんだか現代の女性にも当てはまることをだいぶ昔からおっしゃっていた方がいたんですね。
■最後に
この作品にはほかにも鋭い観察眼で描かれたエッセイがたくさんあります。
それでいて優しくもあり、人間の本質を描いているのですが…。
また文章もすごくわかりやすく、静かな言葉で書かれていて、とてもすっと入りやすいです。
また女性の方に多いかもしれませんが、向田邦子という人そのものに共感する方もいらっしゃるかと思います。
人間を見ることができますよ。