ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

小説 時代小説 歴史

【迫力のある忍びたち】112.「忍びの国」 著:和田竜

投稿日:7月 18, 2018 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、和田竜の「忍びの国」です。

忍びの国 (新潮文庫)

 

■あらすじ

時は戦国時代。伊賀の国は忍びの術が使えるものが多く集まっていた。

そこで生きる無門は女房のお国に稼ぎのなさを嘆かれ、金目当てに同朋を殺してしまう。

それがやがて、伊賀を狙う織田信雄たちの仕掛ける合戦に発展する。

何年か前に映画にもなっています。

 

■作品を読んで

戦闘シーンはなかなかの迫力です。トーコはそんなにバトルシーンを読むのが少ないのですが、この作品は読みながらシーンがかなり浮かんできます。

伊賀の乱は無門が仕掛けたように書かれていますが、この本ではさりげなーく、文語体の歴史書からの引用がちりばめられています。

これのおかげで、作品の人物が本当に実存したり、史実があったりとすごく確証の持てるものになるのです。

それにしても、だましあいがすごいです。一体どこまでが想定の範囲内で範囲外なのか、全くわかりません。

あらすじで紹介した通り、無門が同朋を殺したことで、復讐のために隣国の織田家に行き、織田軍を呼び寄せるような記述があるくらいですから。

織田信長は息子の織田信雄に、「何があっても、伊賀の国は攻めるな」と言い聞かせていたそうです。もちろん、見事に破ってしまいますが。

相当恐れられた、忍びたちの恐ろしさはここにあるのでしょうね。

登場人物たちもかなり魅力的です。忍びの術に関しては右に出るものはいないと言われている無門も、女房のお国のことになると一変します。

惚れた女のことになるとムキになる、伊賀の男にしては変わっている無門。なんてったって小さな小競り合いなら日常茶飯事な伊賀の国ですから。

お国も戦いが起こったら一緒に逃げるも、伊賀の国が危ないことを聞いた後、無門に一言、「国を守る気はないのか、男だろ」的なセリフを言います。

お国はもともと武家の女なので、自然と出てくるのでしょう。それにしても、すごい芯の通った人だなと思いました。

最後は児玉清の解説です。この人はアタック25の司会者でもお馴染みのあの方です。

読書家だったそうですが、この解説文すごいです。何というか、この作品の良さと作者を全力で押してて、熱いです。この本ってそんなに素晴らしいのね、と再確認したくなりました。

この文章を書けるのがうらやましいのと同時に、もう児玉さんの解説がこれ以上生まれないのが残念でなりません。

 

■最後に

最初からなかなかドラマチックで、登場人物のキャラがなかなかに個性的です。

さらに解説まで熱いです。最後の最後まで楽しめる本です。

 

-小説, 時代小説, 歴史

執筆者:


comment

関連記事

【時を紡ぐ】325.『貝に続く場所にて』著:石沢麻依

こんばんわ、トーコです。 今日は、石沢麻依の『貝に続く場所にて』です。 貝に続く場所にて   ■あらすじ ドイツに住む私は、震災のあの日仙台で学生をしていた。その時の震災で野宮が行方不明にな …

【インフラの母】93.『すべての道はローマに通ず』著:塩野七生

こんにちは、トーコです。 今日は、塩野七生の『すべての道はローマに通ず』です。 ローマ人の物語〈27〉すべての道はローマに通ず〈上〉 (新潮文庫) ローマ人の物語〈28〉すべての道はローマに通ず〈下〉 …

【はっとする】218.『出会いなおし』著:森絵都

こんばんわ、トーコです。 今回は、森絵都の『出会いなおし』です。 出会いなおし   ■あらすじ 年を重ね、同じ相手に何度も出会いなおすことを描いた「出会いなおし」。 小学校の同窓会に行き、自 …

【元気の出る本】142.「幹事のアッコちゃん」著:柚木麻子

こんにちは、トーコです。 今日は、柚木麻子の「幹事のアッコちゃん」です。 幹事のアッコちゃん   ■あらすじ アッコ女史が大活躍するシリーズの最終巻。この作品は初めてすべての作品でアッコ女史 …

【元気が出る本】136.『ランチのアッコちゃん』著:柚木麻子

こんばんは、トーコです。 今日は、柚木麻子の『ランチのアッコちゃん』です。 ランチのアッコちゃん (双葉文庫)   ■あらすじ 澤田三智子は小さな出版社の派遣OL。ランチの時はいつもお弁当を …