こんばんわ、トーコです。
今日は、平松洋子の『野蛮な読書』です。
■あらすじ
様々な場所、様々な出来事から結びつく本の記憶。そこからさらに様々な作品につながっていき、またさらに本の海がどんどん広がる。
著者にとって初めての読書エッセイです。
■作品を読んで
この方のエッセイを読むのは初めてですが、なんだか本という切り口からどんどん世界が広がっていくな、と思いました。
本だけではなくそのほかのエッセイも読んでみたくなりました。というか、確保しました。
なんだかのっけから結構引き込まれます。例えば、「能登とハンバーガーと風呂あがり」という冒頭のエッセイ。
まさかですよ、能登に行くために開高健の「戦場の博物誌」を発見し、読みたいというはやる気持ちを抑えられずにいました。
そこで、「モスバーガー西荻窪北口店」に入ります。あの、執筆当時の住所を明かしてるようなもんじゃないですか。
散歩してる途中で…、なんてもはやご近所さんなことくらいばれちゃうのにいいのやら、と思いながら読みます。というか、行くんだこういう店。
2階に上がると、今時珍しや。窓側の4人がみな本を読んでいる。いつ出版されたのと思わず確認しましたよ、ええ。
2010年ですって。確かにそのころだとスマホが今ほど普及していないからこうなりますわね。今なら4人ともスマホを片手に何かしてるので。
本や漫画、語学学習等の自分の自己啓発のためなら有益だと思います。スマホ1台でいろいろなものを詰め仕込めるから便利ですよ。
そういう意味でのスマホの使い方って非常に有益なのですがね。ただ面白い動画を見てるだけではダメな気がしますが。
それは置いといて、たったたった10年でファーストフード店の風景が変わっているなあ、と思いました。
ファーストフード店で席に着いた著者は、開高健の「戦場の博物誌」を読み始めます。わずか20分間ですが、著者の中では開高健の世界に引き込まれます。あっという間に違う世界に連れていかれ、本を閉じれば元の世界に戻るという状況ですね。
うわー、いい本に出会ってる瞬間の興奮の冷めやらぬあの状況。トーコもたまにあるのですが、わかりますよ、これ。
とにかく買ってすぐに読みたい、という想いですよ。まあ、そんなときに本屋併設のブックカフェがあるのが1番いいんですけどね。
行間が空いて、いつの間にか能登に降り立ちます。宿についてから仕事を終え、開高健の「戦場の博物誌」の続きを読み始めます。
物語の世界に集中している間にいつも間にやらごはんですよの声が聞こえます。本当に物語の世界って現実の世界を吹き飛ばしてくれるものなんだからありがたい。
そして何より、その描写も結構すごい。読書が好きな方(だけではないのですが)には共感できること多数なこの著者の心の中の描写。
とはいえ、本の描写とともに能登の宿の描写(囲炉裏や食事)もちゃんと描かれています。読書のエッセイというよりは、本の周りにある風景も見事に描写されています。
なんだか、本を通してその風景を一緒に見ることができて面白いです。
宿で休んでいると1冊の本に目が留まります。南伸坊著、南文子写真の『本人の人々』。「本人」に代わって「本人」の身になって文章を書いたという本。
この本を宿で一緒にいる人たちと読み、みんなで爆笑。何だろう、この破壊的な威力をもたらす本は。読んでいるこっちも気になります。
なんでも、南伸坊さん曰く、「ヒトの身になる」ということは実際にはできないけどやってみよう、と思い立って実行した結果がこの作品。
やる人いるんだ…。
また、布団から出ずに読む夜明け前の読書も好きと語っています。うん、これは読書家レベルとしてもすごいレベルだぞ…。
そこでまさかの川上未映子の「ヘヴン」が出てきます。この人本当にいろいろなジャンルの作品を読むんだな…。
そしていつの間にやら能登から東京に戻っています。
と、このように1本のエッセイの中から実は7~8冊の本が登場します。様々なジャンルの本が自然な流れで登場します。
連載エッセイはこのような流れで進みます。日々のエピソードとそこにある本。そのエピソードの風景もきちんと描かれていて、読んでいるこっちらもその情景に移入できます。
さらに、こうも読みやすく書かれていると、次に読みたくなる本も見つかります。人によってはですが、すでに読んだことのある本にも出合えるのではないでしょうか。
何だが、本についてちょっと新しい発見もできるかもしれませんね。読み終わった今ならこう思います。あらすじ書きに書かれている言葉が嘘ではないこと。
本当に本の海に飛び込んで、泳いで、そこで得たものからどんどんつながっていく世界があるのです。
本を読むことが好きで本当に良かった、ここによさ過ぎる仲間がいるぞ、と心強く思います。
■最後に
本を切り口にどんどん世界が広がっていきます。ここまで広がるんだ、と驚嘆せずにはいられません。
最強の読書仲間がいる、と心強く思います。読書って悪くないんだと。