こんばんわ、トーコです。
今日は、原田マハの『ロマンシエ』です。
■あらすじ
遠明寺美智之輔(とおみょうじみちのすけ)の実家の父は政治家ですが、父親に反対されながらも美術大学に通うアーティストの卵です。
美智之輔の恋愛対象は同性で、それをひた隠しながら生きています。
日本の美術大学を卒業後、ひょんなことからパリに留学することに。
そこで、リトグラフの工房に出会い、そこにある女性がかくまわれていました。
■作品を読んで
すごくコメディ要素が多く、物語は軽快に進んでいきます。
特にですが、美智之輔の妄想癖はなかなかのもので、読んでいる読者としては笑いをこらえるのに必死です。
美智之輔には好きなものが2つあります。
大学の同級生の高瀬君と通称「アバザメ」という略称のライトノベル小説です。
この2つに関しては、すごいテンションで話していきます。
若干ですが、読者の方が引きそうなレベルです。まあ、好きなものに対してのそのテンションはわからなくもないですが…
そんなある日、美智之輔はある日本人の女性と出会います。
その人は美智之輔の大好きな「アバザメ」シリーズの作者羽生光晴(はぶみはる)です。
美智之輔は光晴が訳あって匿われている事情と、光晴はリトグラフ工房に匿われていることを知ります。
美智之輔がリトグラフ工房にはいると、なぜだかわかりませんが、すごく懐かしい気分になります。
どうも、このリトグラフ工房はクリエイターを刺激するみたいですね。
ちなみにですが、このリトグラフ工房は名前もそうですが、本当に実在する工房です。
リトグラフの魅力に惹かれた美智之輔は、ここで働き始めます。また、匿われている光晴の面倒も見ることになります。
また、物語の中盤で、美智之輔の想い人(!?)の高瀬君がパリにやってきます。
彼は、日本で展覧会の企画制作会社に勤めていて、新しい展覧会の企画を探していました。
そこで、美智之輔の勤めるリトグラフ工房を題材とした企画展を行うことになりました。
何が驚きって、リトグラフの企画展は小説の中だけの話ではなく、企画展は小説の刊行当時連動して開催されたそうです。
この仕掛けはなかなかのものです。ちゃんと情報をチェックしていればよかった。
この小説を読んで、美智之輔も高瀬君もリトグラフの魅力にはまっていきます。
そんな場面を見たら、読んでいるこっちもリトグラフ工房の作品を見たくなりますよ。
文庫本版だと、その企画展を行った美術館の館長の言葉が記されています。
舞台裏もなかなか読み応えがあります。
美術の世界で活躍していた著者だからこそできたなかなか離れ業の企画展なんだろうなと思います。
それにしても、体験してみたかった。若干ショック。
物語自体は、ラストは急転直下の展開を迎えます。
若干暴走、爆走しつつもたどり着くべき場所にはたどり着きました。
ネタバレになるので、ここまでにしましょう。
■最後に
物語自体はすごくさらーっと読めてしまいますが、中に詰まっている物語は非常に熱いです。
美術展と連動していたという、すごくなかなかない伏線を隠されています。
作者よ、なかなかやりおるのう、と唸りたくなる作品です。