こんばんわ、トーコです。
今日は、宮本輝の『二十歳の火影』です。
■あらすじ
自分の生い立ちや学生時代、就職してから小説家になるまで。
様々なテーマを題材にしたエッセイが詰められています。
■作品を読んで
幼き日の思い出やこれはきっとあの小説のネタに違いないというエピソードまで、様々なエッセイが収録されています。
1番印象に残ったエッセイはこちら。
家族の状況は決していいとは言えなかった少年時代の著者を救ったのは、本でした。
というか、これはリアルなエピソードなのかというくらいドラマティックなものです。
母が自殺未遂を起こした日に井上靖の「あすなろ物語」を読み、深く感動したそう。
それから図書館に通って本を読み漁り、やがて本が欲しくなる。
本を買うということは、一家の財政を考えるととてもほしいと言える状況ではないが、街中で古本10冊50円で売られているのを見た母親が買ってくれたそうです。
その10冊の本は1983年のころにはまだ著者の本棚にあったそうです。今もあるのかもしれませんが。
著者にとっての本は、父と母の諍いから逃避するためだったり、不良の乗るオートバイの代わりだったり、尻ポケットに入れるアクセサリーのようなものだっととか。
父と母の諍いから逃げるため、しかも押し入れの中で読んでいたとか。
本を開けば、その中の舞台や主人公が織りなす世界が広がっています。
わかります。トーコも昼休みによく本を開いてその中の舞台や登場人物たちがいる世界によく逃げています。
午前中にあった嫌なこと、イラっとしたこと、上司がクソすぎること、本を開けば8割くらいは吹っ飛びます。
トーコも読書で救われている瞬間が多々ありますが、最初にも書きましたが、ここまで本に救われている人ってなかなかいない気がします。
この人1歩間違えればグレて社会で生きるのも危うかったような気がします。
いつか「人間を変えるほどの感動」を与えるほどの作品を書きたいと語っていますが、トーコ的には「錦繍」でかなりやられました。一応リンク入れます。
この作品は本当にすごいと思います。
書簡形式という謎の形で、お互いの過去、現在、未来を思いあうのですから。
また、大学時代について書いたエッセイは完全に「青が散る」ですね。これもリンク貼り付けます。
実話と本人が言ってましたが、改めて読むと実話だー、という実感が出ます。
富山に暮らしていた、どうもあまりいい思い出がないという話も何となくピンときました。
これもトーコも取り上げています。
他にも、就職してから作家になるまでをテーマにしたエッセイもあります。
突然やめることを思い立ってから、「泥の河」の賞受賞まで紆余曲折はあったようです。
作品の中に非常に簡潔な履歴書に記載しています。
■最後に
作家の幼いころから作家デビューし、賞をとるまでのエピソードが詰まっています。
読書は人を救うし、まっとうな人間にすることがよくわかります。
著者の想いや人生がそこにはあります。