ある読書好きの女子が綴るブック記録

このサイトは年間100冊の本を読む本の虫の女子がこれから読書をしたい人向けに役に立つ情報を提供できればなと思い、発信しているブログです。

医療 小説

【考えさせられる本・医療編】38.「ジーン・ワルツ」著:海堂尊

投稿日:5月 4, 2017 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は海堂尊の「ジーン・ワルツ」です。

ジーン・ワルツ (新潮文庫)

 

■あらすじ

曾根崎理恵は帝華大学医学部の助教授で体外受精のエキスパートである。

その一方で閉院の近いマリアクリニックでの代診を行っている。

マリアクリニックには最後の患者の5人の妊婦がいた。

5人それぞれ複雑な事情を抱えていた。

 

■作品を読んで

この本のテーマは「代理母出産」です。

現在日本の法律で禁止されているわけではありませんが、日本産婦人科学会や厚生科学審議会では認めていません。

現在代理母出産に対して様々な意見があると思います。

生命倫理に反している、人工的に子供を作るなんて…。

ただ一方で何かしらの事情があり、子供を欲しても子供ができない、作れない方はたくさんいます。

きちんと議論をし、何らかの結論が出てほしいなと思います。

ただ本作品では理恵がうまいこと巧妙に切り札を用意するため、誰にも知られずにしてしまうのが実に痛快ですが…。というか、完全犯罪に近い気がする…。いいのか、これは。

他にも伏線を使って、医療の現場そのものにも言及しています。

大学の医局制度を崩壊させてしまった現在の制度については、崩壊を目の当たりにして初めてみな気が付くのだなと思ってしまいます。

この作品を読んで、大学病院から派遣されていた医師たちによって地方の医療は支えられていた面が初めて分かったのですから。

地方では産婦人科医がいないためお産ができなくなったり、3年ほど前には都会の病院でも救急搬送たらいまわしで助かる命が助からなかったという何ともすさまじいニュースが流れていたようにも記憶しています。

ま、物語の最後にはメディアを巻き込んでの新しい病院が出現してしまうのですが…。

実に巧妙なやり方で地域医療を支えようとする試みがスタートします。

 

■最後に

「代理母出産」というテーマが最大の柱ですが、ほかにもさまざまな医療現場の問題に焦点を当てています。

この作品が最初に単行本で出版されたのは2008年です。

それからこの問題がどれくらい前進したかは皆さんの想像にお任せします。

エンターテイメントとしても楽しめますが、この作品はすごく考えさせられる要素が多いです。

また別の視点から描いた「マドンナ・ヴェルデ」という作品もあります。

マドンナ・ヴェルデ (新潮文庫)

海堂作品を読んだことのある方は関連する出来事や登場人物を探すのもよいかもしれません。

 

-医療, 小説,

執筆者:


comment

関連記事

【一体何者?】380.『シンクタンクとは何か』著:船橋洋一

こんばんわ、トーコです。 今日は、船橋洋一の『シンクタンクとは何か』です。   ■あらすじ 日本には独立系のシンクタンクがほぼない。ひとえに、政策コミュニティのなさもある。 ですが、今後政策 …

【結ばれない恋】19.『ナラタージュ』 著:島本理生

こんばんは、トーコです。 今日は、島本理生の『ナラタージュ』です。 ナラタージュ (角川文庫)   ■あらすじ 大学2年のときに泉は、母校の演劇部の舞台に客演を頼まれます。依頼主は演劇部の顧 …

no image

【少年の成長】271.『ノーザン・ライツ』著:ハワード・ノーマン

こんばんわ、トーコです。 今回は、ハワード・ノーマンの『ノーザン・ライツ』です。 ノーザン・ライツ   ■あらすじ ノアはたった1軒しかない村で地図製作の父と母、いとこのシャーロットと暮らし …

no image

【後味の残る本】50.『グリーン・マイル』著:スティーヴン・キング

こんばんわ、トーコです。 ついに50冊までやってきました。 さて、今日はスティーヴン・キングの『グリーン・マイル』です。 グリーン・マイル (上) (小学館文庫) グリーン・マイル (下) (小学館文 …

no image

【愛するということ】301.『草の花』著:福永武彦

こんばんわ、トーコです。 今日は、福永武彦の『草の花』です。 草の花 (新潮文庫)   ■あらすじ 私は、療養中のサナトリウムである男と出会った。男の名前は、汐見茂思。彼は、なぜか当時かなり …