こんばんわ、トーコです。
■あらすじ
曾根崎理恵は帝華大学医学部の助教授で体外受精のエキスパートである。
その一方で閉院の近いマリアクリニックでの代診を行っている。
マリアクリニックには最後の患者の5人の妊婦がいた。
5人それぞれ複雑な事情を抱えていた。
■作品を読んで
この本のテーマは「代理母出産」です。
現在日本の法律で禁止されているわけではありませんが、日本産婦人科学会や厚生科学審議会では認めていません。
現在代理母出産に対して様々な意見があると思います。
生命倫理に反している、人工的に子供を作るなんて…。
ただ一方で何かしらの事情があり、子供を欲しても子供ができない、作れない方はたくさんいます。
きちんと議論をし、何らかの結論が出てほしいなと思います。
ただ本作品では理恵がうまいこと巧妙に切り札を用意するため、誰にも知られずにしてしまうのが実に痛快ですが…。というか、完全犯罪に近い気がする…。いいのか、これは。
他にも伏線を使って、医療の現場そのものにも言及しています。
大学の医局制度を崩壊させてしまった現在の制度については、崩壊を目の当たりにして初めてみな気が付くのだなと思ってしまいます。
この作品を読んで、大学病院から派遣されていた医師たちによって地方の医療は支えられていた面が初めて分かったのですから。
地方では産婦人科医がいないためお産ができなくなったり、3年ほど前には都会の病院でも救急搬送たらいまわしで助かる命が助からなかったという何ともすさまじいニュースが流れていたようにも記憶しています。
ま、物語の最後にはメディアを巻き込んでの新しい病院が出現してしまうのですが…。
実に巧妙なやり方で地域医療を支えようとする試みがスタートします。
■最後に
「代理母出産」というテーマが最大の柱ですが、ほかにもさまざまな医療現場の問題に焦点を当てています。
この作品が最初に単行本で出版されたのは2008年です。
それからこの問題がどれくらい前進したかは皆さんの想像にお任せします。
エンターテイメントとしても楽しめますが、この作品はすごく考えさせられる要素が多いです。
また別の視点から描いた「マドンナ・ヴェルデ」という作品もあります。
海堂作品を読んだことのある方は関連する出来事や登場人物を探すのもよいかもしれません。