こんばんわ、トーコです。
今日は、三島由紀夫の『春の雪』です。
■あらすじ
侯爵家の松枝清顕は、幼なじみの伯爵家の綾倉聡子に恋していました。しかし、清顕の自尊心からついに結ばれることなく、やがてとんでもないことになります。
三島のライフワークである、『豊饒の海』シリーズの第一巻。
■作品を読んで
この作品は、輪廻転生をテーマにした『豊饒の海』シリーズの第一巻です。シリーズとしては、4巻構成です。
第4巻の最後の原稿を渡してから、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決しています。まあ、自決とかっこいい言葉で言ってますが、自殺ですね。
とはいえ、太宰治のように本当に中途半端にして自殺されるよりは、まあありがたい気がします。連載は一応終えたのですから…。
そして、4巻分頑張ってブログに書いていきます。毎日リンクが増えることでしょう。夏休み中に終わらせよう…。
結論を言いますと、この作品は、第一巻『春の雪』だけ読んで終えても大丈夫です。トーコは、この巻が1番好きです。美しいから。
この巻だけは映画化されており、妻夫木聡と竹内結子が主演でしたよ。
むしろ、第二巻以降はかなりつらいものがあるので、食傷気味になったら、よしましょう。
それでは作品に行きましょう。
松枝家は、祖父の代で明治維新の功臣となったいわゆる新興華族でした。
父親は幕末の卑しい身分だったことを恥じて、幼い清顕を公家の綾倉家に預けます。綾倉家には、2歳年上の聡子という娘がおり、兄弟同然に育てられました。
その影響か、清顕は男の割にはかなり美しい青年に育ちます。最初の15ページほどは、松枝家と清顕についての描写になりますが、さっくりいうとこんな感じです。
父は清顕を綾倉家に預けたことでこれまでの松枝家にはない優雅さを手にすることができましたが、13歳の時点でかなり美しい少年に育ちます。
天皇臨席の宴で13歳の清顕の姿を見た人からは、褒め言葉をいただくも、父親はかえって一抹の不安を感じたのでした。
飯沼は清顕附けの書生でしたが、清顕の美しさ、ひよわさ、そのものの感じ方、考え方、関心の持ち方と、やることなすことがすべて気に入っておりません。おいおいって設定ですけどね。
一方、18歳になってからの清顕も「飯沼と気が合っているとも思っていない、けど献身的な堅物」と称します。この飯沼という人物はのちの巻でも出てきます。覚えておきましょう。
18歳になり、清顕は周囲から孤立していると自覚します。武張ったことが嫌いで(武家がベースの華族のくせに)、質実剛健な学習院が嫌いです。
そんな清顕が唯一仲良くしていたのが、本多繁邦でした。本多は非常に物静かで、穏和、理知的な性格でした。
清顕は、幼なじみの綾倉家の令嬢聡子が好きでしたし、聡子も清顕のことを好いていました。
しかし、清顕が素直に言わずにもたもたしている間に(ものすごく雑に言うと)、清顕の父松枝侯爵の口添えで、宮家に嫁ぐことが決まってしまいます。
決まってからお互いの気持ちにやっと素直になります。とはいえ、聡子の婚約は宮内庁を宣旨が出てしまっているので、手を出してばれたものなら、一大事です。
1度恋している気持ちを知った2人は、止まることはできません。周囲のおつきのものの協力の下、清顕と聡子は極秘で逢い続けます。
そのころ、タイから2人の王子が学習院に留学に来ます。清顕は家の都合により、2人と仲良くなります。
しかし、学習院の寮に滞在中王子が大切にしていたエメラルドの指輪が紛失したことにより、帰国することになります。
その前に、2人の王子と清顕、本多は松枝家の別荘に滞在することになります。本多はその時に、エメラルドの指輪は月光姫からの贈り物ということを知ります。これも壮大な伏線です。
この別荘滞在中に本多の協力の下、清顕は聡子との逢瀬がかないました。その帰りに、本多に聡子はこういいます。
…いつか時期がまいります。それもそんなに遠くはないいつか。そのとき、お約束してもよろしいけれど、私は未練をみせないつもりでおります。こんなに生きることの有難さを知った以上、それをいつまでも貪るつもりはございません。どんな夢にもおわりがあり、永遠なものは何もないのに、それを自分の権利と思うのは愚かではございませんか。私は、あの『新しき女』などとはちがいます。…でも、もし永遠があるとすれば、それは今だけなのでございますわ。…本多さんにもいつかそれがおわかりになるでしょう。
時は大正元年です。ちょうど平塚らいてうなどの女性活動家のことを「新しき女」と呼んでいた時代のこと。
聡子は1回1回の逢瀬のたびに、覚悟を決めていたようです。結構、重いぞ…。
しかし、ここで事件が起こります。なんと、聡子が清顕との子を宿してしまいます。しかも、聡子の付き人の蓼科の自殺未遂騒動のおかげで露呈されます。
宮家との婚姻が差し迫っている聡子がそんな風なことを起こしたとは…、何事もなかったことにと松枝侯爵の手はずで聡子を中絶させることにします。大阪の医者に行く前に、最後に1目清顕に会いたい、というのが聡子の希望でした。
それから、伯爵夫人と聡子は大阪に行き、無事に中絶します。そのあと奈良の月修寺に行き、門跡に会います。
ここで、聡子は門跡に頼み、出家することになります。もうスーパーダッシュです。
それを知った清顕は、聡子に一目会いたいと月修寺に行くも、門前払いを食らいます。さらに、雪の中面会を求め続けたせいか、もともと体調の悪い中月修寺に行ったので、更に体調を悪化させ、東京へ帰る道中で亡くなります。
「又、会うぜ。きつと会う。滝の下で」という言葉を、迎えに来た本多に託して亡くなります。
これで第一巻は終了です。
遺言で、清顕は本多に、つけていた夢日記を託します。まあ、ここから本多の執着が始まるのですがね。
第一巻は、風景描写の良い壮大な恋愛小説とも読むことができます。ここから先読み進めれば、地味に伏線回収ができます。
なんというか、女は強いなあ、と思わずにはいられません。聡子には一発やられた感が否めない…。
■最後に
輪廻転生をテーマにした、三島由紀夫のライフワーク作品です。
はかなくも美しく描かれた2人の恋と、壮大な伏線が埋め込まれた作品です。
[…] 第一巻はこちらから。464.『春の雪』 なかなか悲劇的な最期から18年後の世界が舞台となっています。 […]
[…] 464.『春の雪』 、 465.『奔馬』 […]