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【知識を得る本・歴史編】59.「キリストの勝利」著:塩野七生

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こんにちは、トーコです。

今日は、塩野七生の「キリストの勝利」です。

 

■あらすじ

紀元337年。コンスタンティヌス大帝亡き後のローマが舞台です。

大帝のあとに残されたのは、実子3人と甥2人。彼らによって分割統治が行われるはずでした。

ところが粛清が行われ、これに生き残ったコンスタンティウスが帝位を引き継ぎます。

それからコンスタンティヌス亡き後はユリアヌスが帝位につきます。ユリアヌスといえば、背教者という名のつく通り、キリスト教優遇策を撤廃した人でもあります。
ユリアヌスの帝位はわずか2年で終わります。ずいぶんと短命でした。
 
ユリアヌス亡き後は、蛮族出身の皇帝が出てきたりと混迷を深めるなかで、テオドシウスが登場します。
テオドシウスは世界史上では、キリスト教を正式に公認した皇帝です。
テオドシウス亡き後はローマは分割されます。
■作品を読んで
この本は、トーコが10年ほどかけてちまちま読んでいる「ローマ人の物語」シリーズのラスト2番目の作品です。
あと1冊で(文庫本ではあと3冊)読み終わる。長い道のりだなあ。
 
建国当初のローマ人の姿が失われて寂しい状態ではありますが、追い打ちをかけるようにローマ人がついに多神教を捨ててしまう日がやってきました。
キリスト教を承認するということは、そういうことなのです。
ここまでくるとあとは堰を切ったようにローマのキリスト教化が進むだけです。
キリスト教化が進んだローマでは、ギリシア・ローマ神殿が破壊されたり、神殿の材料がリサイクルされたそうです。
また、大理石の彫像も捨てられたり、隠されたりとルネサンスがやってくるまで1000年ほど注目されることはありませんでした。
簡単に言ってしまうと、ローマ時代の文化遺産は1000年放置されることになっしまいました。
 
この時代の流れに逆らうような政策を打ったのが、ユリアヌスです。
彼の幼少期は前皇帝コンスタンティウスに幽閉されており、解放されて副帝(皇帝の補佐的地位)になる前は、哲学を学んでいました。
哲学を学んでいたこと影響はないとは言えませんが、ユリアヌスの行った政策はキリスト教を優遇する政策をことごとく廃止しました。
 
これは著者の見解ですが、ユリアヌスは一神教の弊害に気が付いていたんだと考えています。
宗教はもともと人々の魂を救済するものです。事実ローマの多神教もそんな要素がありました。ですが、キリスト教は珍しく布教活動を行っていました。
また、キリスト教を信じることで、現世で利益がるということもなんとも不思議なことのような…。
それは宗教の姿としてどうなのか、とユリアヌスは疑問に思ったのでしょう。
 
■最後に
この本のまえがきに著者はこう述べています。
「流れに乗るか、流れに逆らうか、流れから身を引くか」
時代の流れに対し、人々は様々な反応を見せるものです。
皇帝だって反応や政策が分かれますからね。
目まぐるしく変わる現代でも様々な思いを持っていることでしょう。
それは政策に後押しされて急速にキリスト教化が進む4世紀のローマ帝国でも同じ思いだったのかもしれません。

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