こんばんわ、トーコです。
今日は、高橋明也の『美術館の舞台裏』です。
■あらすじ
美術館に勤める人の仕事とは何でしょう。
展覧会で絵を見ている方とは違います。
学芸員の仕事って、美術館の運営や学術的研究だけではなく、美術展の企画、美術品の収集など多岐にわたっています。
そのほかにも、様々な美術館の裏側が覗けます。
■作品を読んで
美術館の仕事を知る機会はほとんどないので、この作品はある意味で貴重な本でもあります。
特に美術展の裏側が切々と書かれている箇所はなかなかです。
最近首都圏の美術展で有名な作家の有名な作品を集めた展覧会が多く企画されています。
しかも、人が多く集まるではありませんか。ひどい展覧会だと、チケットを買うのに行列に並び、それから入場規制がかかり、会場に入るまで1時間という展覧会もあります。
もはやディズニーランドのアトラクション待ち…。トーコも読書用の本を持ってよく並んでいます。
なんで、こんなに商業的要素満載なんだか…。しかも、スポンサーはなぜにマスメディア?、という疑問を持つ方も多いと思います。
では、紐解いていきましょう。
そもそも企画展の姿を変えたのは、日本です。
バブル期前までは、企画展を行いたい美術館は他の美術館から作品を借り、その代わりに自館の持つ作品を貸すといやり取りでよかったそうです。
ここに金銭が一切かかわっていませんでした。
バブル期を迎え、日本は多少裕福になりました。
ですが、企画展を開催しようにも、日本は欧米の美術館に貸せる作品なんぞ持っておりません。
そこで、企画展のスポンサー企業であるメディアの持つ資金力をもとに金銭で出展交渉を行うようになりました。
欧米の美術館も当初は困惑したそうです。日本の企画展は全面的な商業路線ですからね。企画展=学術的であるべき、という理論が全く成り立っていません。
だが、欧米の美術館もほどなくして資金繰りに窮するようになったため、日本の資金力をあてにして作品を貸すようになったとか。
なんで、この作品が見れるのやら、というのはひとえに資金力のたわモノのようです。
では、日本はなんでマスメディアに頼っているのでしょう。
企画展の実現に向けては、作品の運搬費用を工面できることと、欧米の文化事情に精通し、交渉するための語学力を持つ人と海外とのコネクションを持っているかが鍵です。
この条件に当てはまるのは、戦後から1970年代にかけては、大手新聞社だけでした。
意外と文化活動を支えていたのは公共ではなく、民間だったのですね。
なるほどね、なんて感心しましたが、商業化することで美術のすそ野が広がったこともまた1つの大きな成果かもしれません。
学芸員は企画展でプロデューサー的なことを行いますが、マネジメント力はものすごく問われます。
裏で研究しているだけでしょ、なんて思うかもしれませんが、企画展を行う上では、様々な能力が求められるようです。
実際に欧米の美術館はマネジメントだけではなく、コミュニケーション能力や社交性など多岐にわたる能力が問われるそうです。
また、ほかにも学芸員は、エデュケーションや保存修復、コレクションの収集があります。
コレクションについては、個人の持つ作品の収蔵リストがあるそうで、いろいろと調査等に使用しているそうです。
裏の世界は恐ろしや。
とまあ、学芸員の世界というのは奥が深いです。
とはいえ、日本では正規雇用の学芸員は狭き門ですので、この作品に書かれているように学芸員の仕事は多岐に渡っていることをもう少し理解していただくことと、雇用機会の増進を個人的には希望します。
■最後に
なかなか美術館の裏の世界にフォーカスした本はないので、美術に興味がある方であればものすごくためになります。
他にも、美術作品を守ったり、将来の美術館の世界にも迫っています。
学芸員の仕事のすそ野は本当に広いことと、美術館の裏側では多くの人が支えていることがよくわかります。
[…] 以前、別の作品(162.「美術展の舞台裏」著:高橋明也)でも紹介しましたが、西洋美術は作品数が圧倒的に足りないので、外国から作品を借りてこないといけません。 […]