こんばんわ、トーコです。
■あらすじ
著者の瀬戸内晴美さんというのは、出家する前の瀬戸内寂聴さんのことです。
大きく分けると2つの作品で構成されています。
表題作の主人公は、8年間妻子ある男との不倫に疲れてきた女知子。
少しずつ読み進めると主人公のもとに夫と別れる原因の男と再会し、その男とも関係を持つようになります。
しかし、どちらの男と関係を持っていても不思議と本当の意味で満たされることがなかった…。
■作品を読んで
この作品は作者の実話です。本当にこの泥沼三角関係に陥ったそうです。
とは言え、読み終わった後の感想は「なんてむなしいんだろう」。
不倫しているのに、語り口は恐ろしくあっさりとしています。
この知子という女性、不倫はしていますが、染め物の仕事できちんと経済的に自立しているせいか、かなり堂々と生きています。
その自立心が2人の異なる男の愛を受けることに対して何か麻痺したものをもたらしているのではないかと思います。
知子という女性は本質的には賢い人だと思います。いつか必ず別れの時が来ることを、その時の覚悟はできていること。
だけど、この2人の男に関してはダメです。
2人の男がいることに満足し、安息の場所を得ている自分に酔っているのです。
後にどちらの男とも別れることになります。
きっと中途半端ではダメなのだということに気がついたのでしょう。
それに8年が経過しました。いつの間にか知子は30歳から40歳近くなり、男も40歳から50歳になります。
男の姿を改めてみると老いを垣間見、自分に照らし合わせます。
ここまで旅をともにしていたのだなと実感するのです。
物語の最後で花びらが知子のもとに落ちます。
この情景の描写がなんとなく静かに熱く燃えた恋に終止符を打ったことを予感させます。
この作品は、本当にむなしいのですが、妙にあっさりとしています。
なんというか、読んでから何年たっても印象が忘れられません。
■最後に
寂聴さんにんついて調べるとすごい名言が出てきました。
「本当のね、恋の醍醐味は不倫ですよ」
この作品を読むとこの名言の重みがものすごくわかります。寂聴さん、ある意味すごいです。
すごく妙な印象を残す作品です。