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【生まれ変わりを探して】466.『暁の寺』著:三島由紀夫

投稿日:8月 17, 2023 更新日:

こんばんわ、トーコです。

今日は、三島由紀夫の『暁の寺』です。

 

■あらすじ

本多はいささか年を取りました。もう、若さも無垢の情熱もありません。

そんな中、仕事で行ったタイで日本人の生まれ変わりと言い張る幼い姫に出会う…。

 

■作品を読んで

さてさて、これで『豊饒の海』シリーズの第三巻までたどり着きました。ふー、長い。すでに紹介した2巻はこちらから。最後も一応入れます。

464.『春の雪』 、 465.『奔馬』 、467.『天人五衰』

ここからいよいよ読むのがしんどくなります。って、このセリフは前回紹介の『奔馬』でもすでに言いましたが…。本当にしんどいです。

この作品は、2部構成になっています。第1部は1941年から1945年まで、第2部は1952年から1967年です。

ちなみに、タイトルの暁の寺は、タイ・バンコクにあるワット・アルンという有名なお寺から来ています。このお寺実際に見ましたが、かなりきれいなお寺です。

なお、ワット・アルンの描写が冒頭しばしばのページを割いて描いています。

第1部で、本多は47歳になっていました。もう若さも、力も、無垢な情熱も残っていません。そんなに希望のない状態で日々を過ごしています。

そんな時に、タイに出張に行きます。そこで、王族との謁見にかない、ジン・ジャンという7歳の姫に出会います。

ジン・ジャンという名前は、第一巻で登場したタイから来た2人の王子のうちの、パッタナディド王子の婚約者です。

婚約者のことが忘れられないパッタナディド王子は、末娘にジン・ジャンと名付けたとのこと。えっと、よくもまあ妻が許したことよ…。

ジン・ジャンは本多の姿を見て、こういいます。

本多先生!本多先生!何というお懐しい!私はあんなにお世話になりながら、黙って死んだお詫びを申し上げたいと、足かけ八年というもの、今日の再会を待ちこがれてきました。こんな姫の姿をしているけれども、実は日本人だ。前世は日本ですごしたから、日本こそ私の故郷だ。どうか本多先生、私を日本に連れて帰って下さい

はい、気持ち悪いですね…。どんな姫様よって突っ込みたくなります。

いきなりこう言われるのですから、本多が清顕の夢日記を託されておぼろげながらも記憶があるからピンとくる話ですが、本多がそんな人間でなければ姫様はただの不審者ですね。

本多はジン・ジャンの告白に何かを感じます。質問をあと2つします。松枝清顕と本多が門跡に会った日と飯沼勲が逮捕された日について聞くも、ジン・ジャンは正確に答えます。

ジン・ジャンは飯沼勲の生まれ変わりと思われますが、実際は脇腹に3つの黒子はなかったので、生まれ変わりではないと本多は思っています。

まあ、脇腹に3つの黒子を観察している時点で、本多もかなりヤバい人ではありますが。

本多はジン・ジャンに会った後で、インドに行きます。そこで得たサリーと詩集をジン・ジャンに献上し、帰国します。

帰国してから2,3日してから、真珠湾攻撃が始まります。もう自分はそんなに若くはないので、戦争に行くことはないだろうと思っています。

戦争中は、唯識論や輪廻転生をテーマに研究をします。

ある空襲のひどかった後のこと、本多は旧松枝邸の様子が見たくなり、ひとり向かいます。

松枝邸は14万坪の広大な土地を渋谷の道玄坂の上に会ったのですが、大正時代の半ばに10万坪を売り、そのお金を預けていた銀行の倒産で失われ、残りの4万坪も手放すことになり、今では1000坪程度になったとのこと。清顕が亡くなったことにより、見事に没落したようです。

そこに偶然にも蓼科という聡子についていた侍女がいました。蓼科は95歳になり、聡子が出家してからお暇をもらい、綾倉家から離れたこと。

綾倉家も見事に没落し、聡子の父親が亡くなった後は東京の屋敷を処分し、母親は京都の親戚の家にいるとのこと。

また、聡子にも3度会い、この世の濁りを払った美しさがあるといいます。本多は一目会いたいと思いますが、戦局が激しい中で列車の切符はとれず、それどころではなくなりました。

ここまでが第1部です。第2部は戦後の話になります。

第2部では、本多は58歳になります。なんと、戦前から手掛けていた訴訟の成功報酬により、4億近いお金が転がり込んでき、御殿場に別荘を建てることになります。

これを機に弁護士生活に飽きていた本多も、不真面目に生きられると思ったのでしょう。同時に、長年本多を支えた妻梨枝は病を患っていたので、病気療養を理由に御殿場に移ります。

別荘には、近所の年下の有閑夫人の久松慶子、歌人で第二巻でも登場した鬼頭槇子、弟子の椿原夫人、ドイツ文学者の今西がやってきます。

ある日、骨董屋でエメラルドの指輪を見つけます。それは第一巻でタイの王子がなくした指輪でした。

これを日本に留学しているジン・ジャンに渡そうとしますが、ジン・ジャンは約束をすっぽかすわ、6歳の時に言った「日本人の生まれ変わり」宣言は全く覚えていないようでした。

しかし、成長したジン・ジャンの姿を見た本多は、その美しさに魅了され、ジン・ジャンに執心します。

超変態すぎてドン引きしますが、本多はジン・ジャンをのぞき見できるように壁に穴をあけていました。

のぞき穴から見た光景は、久松慶子とジン・ジャンが抱き合っている光景でした。2人はレズビアンでした。そして、ジン・ジャンの脇腹に3つの黒子がありました。

本多がそれを確認している最中に、妻の梨枝がやってきて当然ですが、ドン引きしています。

梨枝の側から見れば、まあさげすみますわね。見事な幻なのですから。

梨枝にとって、ジン・ジャンは心穏やかな存在ではありませんでした。慶子は大丈夫なのは、おそらく恋愛対象でも、財産相続人でもないから。けど、若いジン・ジャンは財産を持っていかれる存在であること。

だけど、夫がなぜ執心しているのかがやっとわかると、のぞき見行為もありさげすみます。

ちょうどその時に、別荘で火事が発生し、椿原夫人と今西が心中します。そして、のちのちジン・ジャンは蛇にかまれて死んだことを伝えられます。

これで物語は終了です。ふー、今回も長かった。

 

■最後に

輪廻転生をテーマにした物語も、一気に転に向かって回りだします。ここからは、年老いた本多が主人公となり、展開していきます。

夢のはかなさ、一歩間違えれば大変なことになることがいろいろと伝わってきます。

 

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