こんばんわ、トーコです。
今日は、阿川佐和子の『アガワ流生きるピント』です。
■あらすじ
この中には仕事、恋愛、家族、生活についての37のお悩みがある。
それに対して、アガワさんなりに少々ピントがずれているようにも思われるが、アガワさんの知恵と経験のたまものだけではない素敵なヒントが詰まっています。
■作品を読んで
阿川佐和子作品は以前にも紹介しましたので、良かったらどうぞ。
それにしても、まえおきからして爆笑なのですが…。
まず、アガワさんの悩んだときの解決法が、
- 寝る
- もっとつらいことに思いを馳せる
- 「よかった。この人がお姑さんじゃなくて」
なのだそうだ。
まず2だと、例えば熱でうなされていても、お腹が痛いときはもっとつらいぞ、と想像する。こうすることで、多少は苦しみが薄らぐらしい。
なんの精神論なんだろうか。というか、最後に「母ちゃん、助けて!」と叫んでみる。でも、父の世話で精一杯のため母が来た試しがないらしい。
これは阿川家の事情がかなり入っているのだが、要するに昔の日本の家庭って割とアガワ家のような状態だったのでしょうね、きっと。
まあ3も、なんの精神論なんだろうか、と突っ込みたいんですが…。
これはどういうことかというと、ご近所にすむ甲高い声のオバサンがうるさくしているとき、アガワ母が「ああいう人がお姑さんじゃなくてよかったと思えばいいのよ」と言い、それを聞いて納得したことがきっかけなのだとか。
また亭主関白なアガワ父も怒ると「出ていけ!」だとか結構すごいようですが、許しを請うように必死に謝ると、
「わかればよろしい。俺はこういう性格で、こういう職業(小説家)だから、普通の家庭で通用することが通用しない場合があるかもしれん。ひどい父親だと思っているだろう。しかし、遠藤(周作氏)の家を見ろ。北(杜夫氏)の家を見ろ。あそこまでひどくない。あいつらと比べたら、俺はかなり真っ当なほうだぜ」
スゲー、こう言うのかい。文豪の父恐ろしか。
まあ、北杜夫の家よりは本当にマシだと思うが…。あちらさんは、北杜夫が躁うつ病でかなり家族が振り回されていたはずだから、あながち本当やわ…。
あ、それについてもこの本が語ってくれています。48.「窓際OL 人事考課ガケっぷち」著:斎藤由香
娘さんの視点での北杜夫家がちょこっと描かれています。ま、そっちがメインではないんですが…。
で、アガワさんの反応は、この言葉がどれほどの説得力を持っているかは不明ですが、確かにそうかもと納得することで。自分の身を守る技を身に着けた気がするのだとか。それはそれですげー。
さらに、まえがきの中にこうも記されています。
その一つは、つらいつらいと思いつつ長年聞き手の仕事をしてきたおかげで、ゲストの方々が乗り越えてきた艱難辛苦の知恵と体験を、皆様に受け売りできたことである。幾多のインタビューは決して無駄ではなかったと気がついた。
どれほどの偉大な成功者にも、必ずと言っていいほど過酷な苦しみと試練の経験はあるものだ。そういう方々の逞しさに触れたおかげで、私はこうして笑って生きていられるのかもしれない。
インタビュー仕事で感じたことも解決策を導き出す一助になっているのだそうです。どんな人も苦労はしています。
こういった情報を反映しているからありがたい。だから、本って面白い。
さて、お悩み相談編に行きましょう。
まず、1番最初の「仕事が忙し過ぎてヘトヘトです」という胃薬のコマーシャルか、というくらいの簡潔なお悩み相談から。
ちなみに、全編こんな感じで悩み相談が始まります。このキャッチコピーかというくらい短い文章がとっつきやすいのですが。
これに対するアガワさんの答えは、「短い仕事から片付ける。愚痴る。そして、寝る」だそうです。
なんでこんな結論になっているのかは、詳しくは作品を読んだ方がいいのですが、この2行の間には3~5ページほどの解決が詰まっています。
アガワさんも原稿書きや対談の資料読みやらで結構パニックになることが多いのだそうです。
そんなときの行動は、まずやることを箇条書きにし、どこから手を付けるかを考えるのだそうです。って、これ意外と普通…。
それから簡単そうな仕事から片付け、箇条書きのリストに線を引いて消す。(いつもトーコやってますけど)
それで達成感を味わい、そのノリで最後まで一気に仕上げるのだとか。(いつもトーコやってますけど、2回目)
著名人とはいえ、意外と普通な方法で仕事しているんだな、と妙に納得しました。基礎基本って大切ですね。
次に「愚痴る」。これは、アガワさん曰く、何人もの人に愚痴るのを繰り返したら、こう気づきます。なんて自分の悩みは小さいんだ、と。
なんかまえがきと同じようなことが出てきましたけど。確かに、これもわかります。
ついでに言うと、しゃべることで悩みが整理されます。悩みのポイントとか、直せそうなところ、なんでこうなったという経緯、解決の糸口など。
これも、激しく同意です。わかります。というか、1人でばっとしゃべって、よく勝手に納得したり、なんか閃いたりするんですよ。
最後に、1番大切なのは身体で、睡眠不足にならないようにするためにとにかく寝ること。
なんだか基礎基本を再確認したような気がします。
その他にも結論をサクっとまとめた言葉を並べてみます。
・ピチピチが皆無になっても魅力的でいられるよう、自分を磨きましょう。
・娘が無視できないくらい、恐い父親を演じてみなさい!
・同性は”試着室”と心得よ。
・家事をさせましょう。そして褒めましょう。
・家庭内クーデターを起こしましょう。
パッと読んだら、なんじゃこりゃと絶句することでしょう。詳しいことは、作品を読んで見てください。
まあ、「恐い父親演じろ」は、さすがアガワさんだな、と思うでしょう。アガワさんの父上曰く、「養ってもらっているうちは、子どもに人権などないと思え」という人だったそうな。
この結論にたどり着くまでの道のりは必読です。面白いし、ためになる。何より意外と当たり前なのですが、意外とおろそかにしていることを突いてきます。
アガワ流アドバイス、結構面白いですし、何より読み終わった後明るくなって、気持ちがふわっとしますよ。
■最後に
みなさんのお悩みに対してアガワ流の解決策をなんかのキャッチコピーかというくらい簡潔にパパっとまとめられています。
もちろん、その簡潔になるまでの過程も爆笑です。そして何より意外と基礎基本が積み重ねられている解決策が多く、実行しやすいです。
読み終わった後は明るく、ふわっとしますよ。