こんばんわ、ト―コです
今日は、江國香織の『神様のボート』です。
余談ですが、この本はト―コが高校生の頃から何度も何度も読み返している本です。
■あらすじ
母の葉子は別れた恋人と会うため、「あのひとのいない場所にはなじむわけにはいかないの」という母と娘の草子が旅を繰り返していく話です。
この話は母が別れた恋人を想い続けながら旅を繰り返す要素だけではなく、草子の成長の要素も重要です。
冒頭にも書きましたが、なぜ何度も読み返したくなるのでしょうか。
初めて読んだとき、あまり母の葉子の部分にあまりいい感情を持てなかったのに、読み返すと少しずつですが葉子の気持ちも分かってくるような気がするのです。
まあ、最初に読んだときが高校生のときだったのも原因の1つで、年齢の近い草子に気持ちが寄っていったのもまあ、事実。
物語の最後の部分になると草子は高校生になるからでしょうか、まあわからないわけでもない。
でも、初めて読んだときはしばらく頭から抜けない話だな、とぼんやりしていた記憶があります。
それにしても、引っ越しの動機が凄い。葉子が「あの人はここにはいない」といって母娘で2,3年おきに引っ越していくのですから。
でも、引っ越しをし続ける本当の理由は違いますが、ネタバレになるので、是非読んでいただきたいです。
葉子は何というか、現実の時を生きていない、過去を見ているのです。
一方の草子ですが、幼い頃から引っ越しを繰り返すことは、せっかくできた友達とも別れます。
どんどん成長していく草子はやがて母から離れようとします。進学という形で。
草子は母の引っ越し癖に翻弄され続けていても、自分の意思を持って選びました。
草子は成長し、現実を生きています。
草子のいなくなった葉子は物語の最後でいろいろと過去を整理するため、様々な人に会いに行きます。
その中で、ある人から葉子の探していたあの人が東京にいる、という情報を得ます。
なんというか、すごくエキセントリックな話なのに、現実にいそうな雰囲気があるのが江國作品の特徴なのかなと思います。
この作品は最初に感じた江國作品です。
■最後に
読み返すたびに感想が少しずつ変わっていくのはいいことでもありますが、昔はこう思えたことが今はもう感じることができなくなって
いるのも、過ぎ去った過去を感じるような気がしてさびしいものです。
時を経ると感想が変わってくることが分かるのも本の魅力の1つです。
それがわかる本です。