こんばんは、トーコです。
今日は湯本香樹実の『岸辺の旅』です。
■あらすじ
3年間失踪していた夫(優介)が帰ってきて、いなかった間どうしていたかを話して欲しいと言った。
妻(瑞希)はお互いにいなかった間は分からない。
いつの間にか失踪している間優介が過ごしていた場所へ旅に出た。
■作品を読んで
読み終わってすぐには感想がすぐに見つかりませんでした。
なんと表現すればいいのか収まりつくかわからなかったからです。
ただ、妻からすると死の世界が意外と近いのに、夫と過ごしていると夫は本当に生きているようにも思ってしまうのも事実。
一緒に語ったり、食べたり、寝たり。生身の人間として存在しているのですから。
やりきれないでしょうね。それでも、夫は本当に死んでいることを徐々に受け入れていく準備を進めます。物語の終盤で本当に夫と2度と会えなくなります。
この作品は結構重めなテーマを扱っていますが、死の世界がそこまで重くのしかかっているわけではないです。でも一定の重さはありますが。
死者の世界と生者の世界が交わって、行き来し、何かを共有する。
何か切ない。だけど旅を通して瑞希は気がつく。これ以上どこへも行けない未来があることを。
夫がいなくなるという事実を受け入れることで、2人の絆を再生することができ、これから先を生きることができるのです。
■最後に
死者と生者が近くにある作品はなかなかないです。
旅を通して、絆や想いの強さを思い知り、明日に向かえます。
読後は何かに圧倒されて言葉にすることができないほど、静かに心震える作品です。