こんばんわ、トーコです。
今日は、塩野七生の「サロメの乳母の話」です。
■あらすじ
ホメロスにサロメ、ユダ、キリスト、ネロ…
誰もが知っている歴史上の人物たちのその周囲の人たちの視点から見た物語です。
■作品を読んで
最初に言うことといえば、この作品はある程度は史実に基づいているのでしょうが、おそらく著者の他の作品よりもより一層創作的な部分が多い気がします。
なので、すべてが本当かといわれてしまえば多分違います。非常にエンターテイメント要素の大きい作品かと思います。
それゆえでしょうか。歴史上の人物とはいえ、日本人にはなじみのない人物を描いていてもそこまで苦もなく読める気がします。
個人的には馬目線の短編が面白かったです。
中島みゆきの「空と君との間には」並みにびっくり。ちなみにこの曲は、犬目線で書いたとか。
馬はカリグラ帝の愛馬です。馬曰く、姿、形はかなり不格好で、謳い文句は「人語を理解できる馬」。そんなやつ、皇帝の馬に選ばれるはずがない。
ところが、選ばれました。カリグラ帝の愛馬に。
しかも、この馬かなり気に入られたのか、カリグラ帝はこの馬専用の厩舎というかもはやアパルトマンを作らせ、馬用の奴隷を贈呈されます。
さらに、馬は仕えている奴隷から「○○閣下」と呼ばれます。
プラス、皇帝が馬が安心して眠れるようにと10人の兵士を配置します。さすがの馬もこれには引いていましたが。
馬目線もここまでくるともはや人間と変わらないです。なかなか観察眼の鋭い馬です。
まだ、馬の話は続きがあります。なんと馬は元老院議員になります。
この頃にはカリグラ帝がかなり暴走し、元老院議員たちも首を切り落とされる可能性があるかもしれないため、カリグラ帝に何も言えずにいました。
馬もこの状況をわかっていました。でも、人語を話せないので、何もできずにいました。
最後はカリグラ帝が何者かに殺されてしまい、家族もろとも殺されてしまいました。
当然馬も殺されてしまいます。馬から見ても権力者のはかなさが良く伝わります。
とはいえ、カリグラ帝なかなか行動面に問題の多い方ですが。
最後の地獄で開催される饗宴の設定には爆笑です。
出席者は女ばかり6人です。6人の内訳は、クレオパトラ、ビサンチン帝国の皇后テオドラ、スパルタの王妃ヘレナ、ソクラテスの妻クサンチッペ、マリー・アントワネット、江青女史。
地獄で展開される歴史上の出来事には結構爆笑です。こういう切り口だと面白くなるのね。
最後はまさかの本人で締めてしまいます。
ここで、あなたが登場するんかい、ってツッコミたくなります。悪妻って自分で言っちゃうのね。
■最後に
表紙のおそらくモローと思われるサロメの絵が見事です。でもサロメの話だけではないのですよ。
史実以外は多少のエンターテイメント性を持たせていますが、歴史上の人物もこうしてみると面白いものです。